新「NISA」来年スタート

来年1月から始まる新「NISA」制度。離島住民の資産拡大につながるだろうか(沖永良部島)

「貯蓄から投資へ」資産形成後押し
金融教育の必要性高まる

 今月4日付の本紙「現場から」で、離島の条件不利性改善に向けて政治力の重要性を説いた。今回は、物価やガソリン代の上昇が続く中、資産形成を後押しする制度として、来年1月から始まる新「NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)」に注目したい。

 日本の税制では、国内外の株式や投資信託を購入した場合、その配当金や株式を売却した際の利益に対して約20%の税金がかかる。

 国民に投資を促すため、投資の運用益を非課税にしたのが、2014年から始まったNISAだ。低コストの投資信託を購入できる「つみたてNISA」と、上場株式なども対象になる「一般NISA」の2種類があり、投資上限額と非課税保有期間は、つみたて型が年40万円を上限に20年間(最大800万円)、一般型は年120万円を上限に5年間(最大600万円)で、併用はできない。金融庁が公表した今年3月末時点でのNISA口座の利用状況は1873万口座(つみたて型783万口座、一般型1090万口座)となっている。

 昨年11月、政府は資産所得倍増プランを決定し、新しいNISA制度の概要を示した。多様な資産運用ニーズに応えられるよう、現行のつみたて型と一般型の併用を可能にし、投資できる期間を恒久化、非課税保有期間も無期限にした。生涯の投資限度額は1800万円で、そのうち一般型の機能を引き継ぐ「成長投資枠」の上限を1200万円とした。

 制度の大幅拡充により、政府は資産所得倍増プランにおいて今後5年間でNISAの口座数を3400万にする目標を掲げている。

 与論町の6月議会一般質問で、南有隆議員は「住民の所得を上げるために国は貯蓄と投資を勧めている。投資をやろうとしても、素人が手を出すと失敗するかもしれないという恐怖もある。しかし、中学や高校では金融教育が行われており、町においても早いうちから投資や貯蓄に関する教育をしていく必要があるのではないか」と提言した。

 新NISA制度を積極的に活用するため、住民一人一人が投資のメリットやリスクについて情報を収集していく必要があるだろう。例えば、老後生活を送るために年金とは別に必要とされる2000万円を準備しようとすると、単純に計算して月5万円の貯金で33年4か月かかる。同じ額を年利3%で積み立て投資すると、23年3か月で達成できる。月5万円を貯蓄や投資に回せるのは、ある程度所得の高い人に限られるが、新NISA制度の対象年齢は18歳以上となっており、毎月の積立額は少額でも若い人が長い時間をかけて資産形成に取り組める。また、預貯金に余裕のある人は、上場株式に投資して得られる配当金を生活費に充てることもできる。

 財務省が発表した昨年度の国の税収が、71兆1374億円となった。初めて70兆円を超え、3年連続で過去最高を更新した。物価高による消費税収の増加が要因の一つだ。物価と同じくガソリン価格の値上がりも激しい。今月18日時点のレギュラーガソリン1リットルあたりの全国平均小売価格は174円ちょうどで、2020年5月の124円80銭から2年ほどで約50円上昇した。消費税に関して、直近の県議会で塩田康一知事は「輸送コストで物価が高い中での消費税は、離島住民の負担が大きい。軽減を国に働き掛けていきたい」と述べた。

 離島住民が置かれている状況は厳しい。格差社会の是正には政治力が必要であるし、住民もリスクを取りながら行動を起こさなければならない。国が進める「貯蓄から投資へ」の流れが離島住民の資産の拡大と老後の安定した生活につながるのか、新NISA制度に期待したい。
(沖永良部支局・逆瀬川弘次)