ケナガネズミ市街地出没相次ぐ

市街地で出没が相次いでいる国内希少野生動植物種・国指定天然記念物のケナガネズミ(環境省提供)

希少性高い生き物 環境省、注意点を周知
名瀬市街地で10件、ロードキルも

 奄美大島や徳之島、沖縄島北部のみに生息するケナガネズミ。希少性の高い生き物のため国内希少野生動植物種や国指定天然記念物に指定されているが、個体数の増加に伴い奄美市名瀬など市街地での出没が相次いでいる。環境省奄美群島国立公園管理事務所(奄美野生生物保護センター)では目撃した場合などの注意点をまとめ、周知を図っている。

 同事務所の発表によると、ケナガネズミの出没・ロードキル(交通事故死)事例では、今年1月から7月31日までの間に、奄美市名瀬市街地で10件、瀬戸内町古仁屋近辺で3件の救護及び死体回収があった。そのうち3件がロードキルと判明。ほかにも民家や商店などに侵入したという目撃情報が名瀬市街地で3件確認されている。

 注意点として挙げるのが家の中にいた場合と、わなに掛かっていた場合。ケナガネズミは非常に鋭い前歯を持ち、寄生虫や感染症を持っている可能性もあるという。「絶対に素手などで触らないように」とするとともに、▽家屋に入り込んでいた場合は、出口を1か所にして外へ出るよう誘導を▽どうしても出ていかない、わなに掛かっていた場合は、殺したりせずに野生生物保護センターなどに連絡を▽ケナガネズミが家屋に侵入しないよう網戸の破れや天井の隙間などは塞ぐ―などの対応を呼び掛けている。

 法令規制対象外の他のネズミ類を捕獲しようとして誤って捕獲してしまった場合や、殺鼠剤=さっそざい=などを他のネズミ類に用い誤って死亡させてしまった場合でも、故意でなければ罪に問われることはないという。ただし、わなを使用する際は、粘着シート式わなでは捕獲されたケナガネズミは死亡する可能性があることから「ネズミ用捕獲器(かご式わな)などを用い、ケナガネズミの入らない小さなわなを用いるなど、なるべく傷つけない、捕獲しないための可能な範囲での配慮」を求めている。

 ケナガネズミは夜行性で、夜間に見られることが多い。夜間の街中での運転については「気を抜かず、安全運転の実施に協力を。もし、ケナガネズミをひいてしまっても罪に問われることはない。死体やけがをしている個体を見つけた場合を含めて、すぐに連絡を」と注意喚起している。

 連絡先は次の通り。

 環境省奄美野生生物保護センター電話0997・55・8620、メール:RO-AMAMI@env.go.jp、奄美市教育委員会天然記念物担当0997・54・1210(奄美博物館内)、瀬戸内町教育委員会同0997・72・3799(瀬戸内町立図書館・郷土館内)

メモ

 ケナガネズミ ネズミ科の動物で、国内で最も大きなネズミ。30㌢程度の長い尾の先端半分が白いことや、体に長い毛が生えていることが特徴。夜行性で樹上性が強く、木の実や昆虫類、カタツムリなどを主食としている(環境省発表資料から)