台風が結んだ異文化交流

ひょっとこ面をかぶり、のりのりで踊り出す高校生たち(2日=「ならびや」で)

 

祭りばやしとシマ唄
総文出演校に島料理振る舞う

 

 

 台風6号の影響で帰路につけず、島に缶詰め状態となった総文出場の高校生たちに、シマ唄と島料理で知られる店が温かいご飯を振る舞った。サンシンとシマ唄に合わせ踊り出した高校生たちは、総文での演目を披露、思わぬ異文化交流の夕食会となった。

 1日閉幕したかごしま総文2023の伝統芸能部門。台風6号の影響で、会場となった奄美大島に延泊を余儀なくされた高校も多い。奄美市笠利町のコンドミニアムに宿泊した静岡・横須賀高校の郷土芸能部8人もその余波を受け、朝食以外の食事は、自炊と弁当に頼るしかなくなったという。

 そんな高校生たちに手を差し伸べたのはシマ唄島料理の店「ならびや」の和田孝之さん。FMたつごうで番組パーソナリティーを務めている和田さんは、31日に同局の番組に出演した同校の窮状を伝え聞き、生徒・教諭ら11人を2日、夕食に招待した。

 「団体30人のキャンセルがあり、食材が無駄になるところだったから歓迎。いい機会だから奄美のシマ唄にも触れてもらいたい」(和田さん)と夕食後のシマ唄ミニライブも企画した。

 夕食会が終わると、東京在住の唄者・森永あすかさん(26)が「朝花節」「黒(くる)だんど節」などを歌いミニライブに。

 「ワイド節」「六調」が始まると、3年・鈴木友弥さん(17)と1年・遠藤多真(かずま)さん(15)が、のりよく踊り出し、ほかの部員たちも笑顔で一緒に踊り始めた。

 興が乗った部員が、舞台で使うひょっとこの面をかぶると、総文で発表した江戸祭りばやしの流れをくむ「三社祭礼囃子(さんじゃさいれいばやし)」の「シタッ、シタッ」という名調子を全員で披露。祢里(ねり)を引く際の威勢のいい掛け声を店内にこだまさせた。

 1年・矢作智世さん(16)は「楽器が好きだから、サンシンやチヂンの作りが気になった」と話し、3年・宇津山未来(みく)さん(17)は「静岡では聴けない音楽、楽しかった。発表で使っている太鼓は高い音がメーン。低い音にも別の良さが感じられた」とチヂンやサンシンを手に取りじっくり観察していた。

 和田さんは「いい機会になった。島の文化を少しでも知ってもらえれば」と、楽しそうに歌い踊る高校生たちに目を細めていた。