奄振審議会

船舶欠航の長期化で物流供給の停滞が続いている名瀬港

「島内での安定的備蓄検討を」
物資供給の 停滞影響軽減で意見

 奄美群島振興開発審議会(石塚孔信会長)は、奄振計画の最終年度にあたり今後の方向をまとめ、7月28日付で国土交通、総務、農林水産の各大臣に意見具申した。この中では欠航・抜港に伴う物資供給の停滞による住民生活への影響を軽減するため、「生活関連物資の島内での安定的な備蓄の在り方の検討を行うべき」と言及している。

 意見具申では、奄美群島の振興開発において重点的に取り組むべき課題として①産業の振興②観光の開発・交流の促進③交通・情報通信基盤の整備、人流・物流の円滑化④生活環境の整備・定住の促進⑤防災対策の推進⑥自然環境の保全等⑦再生可能エネルギーの利用⑧教育及び文化の振興⑨デジタル技術の活用⑩奄美群島振興開発基金―を挙げている。

 このうち備蓄については、人流・物流の円滑化の中で取り上げている。離島である奄美群島を発展させていくには「住民生活や産業振興を支える航路及び航空路の維持・拡充が重要であり、合わせて人の往来や物資の流通の基盤となる道路や港湾等の交通インフラを整備し、安全かつ安定的な輸送を確保する必要がある」としている。迷走、ノロノロ台風6号の影響により、鹿児島本土と奄美群島を結ぶ海の便は7月末以降、定期船や貨物船の欠航が続いている。台風は県本土にも影響を与えていることから運航再開は10日以降の見通しで、欠航の長期化で島内の小売店などでは食料品を中心とした商品不足から島民生活への深刻な影響が続いている。

 元県議(奄美市区選出)で、県議会の一般質問などで奄振の農林水産物等輸送コスト支援事業を活用し船舶欠航時の航空便活用や、生鮮食品などの備蓄施設整備の必要性を訴えてきた向井俊夫さん(74)は「(航空便は)現行制度の活用の難しさ、(備蓄施設は)調査・検討を県当局は答弁していたが、今回の事態を踏まえて、県はもっと本気で取り組んでほしい。調査・検討の繰り返しは、やらないということ。航空便の活用(貨物輸送)は沖縄では実現している。奄美群島の振興開発は、国が策定する基本方針に基づき県が奄美群島振興開発計画を策定している。地元市町村は県への働き掛けを強化すべきではないか。対策に取り組まない限り同じ事態が今後も繰り返される」と指摘する。

 船舶の欠航は物流供給だけでなく、現在のマンゴーのように農産物の島外出荷にも打撃となる。奄振審議会の意見にある安定的な備蓄の在り方は、冷凍・冷蔵機能を備えた備蓄施設など地元が具体的な方法をまとめ、提案していく姿勢が求められそうだ。