伊仙町でICU人類学調査

中央の若者視点の調査成果を地元に発表、関心を集めた国際基督教大学の学生ら(16日、伊仙町)

島暮らし価値観に焦点 中央の若者視点に関心
成果報告

 【徳之島】国際基督教大学(ICU、東京都三鷹市)学生らの人類学調査実習「伊仙町フィールドワーク成果報告および感謝の会」が16日、同町ほーらい館であった。10日頃から地域に溶け込み調査交流した島の人々のつながりや子育て、暮らし、伝統文化などに対する住民の意識など感想を発表した。調査協力した住民や町教委など関係者約45人が参加し、都会の若者らの視点・考察に関心を示した。

 フィールドワークは人類学調査実習(講義)の一環。ICU社会・文化・メディアデパートメント長の森木美恵教授が率いる2~4年生13人。森木教授が過去に同町誌編纂室を介し研究調査入りしたのが縁で初実施。当初2~16日を計画したが、台風6号の影響で鹿児島本土などに足止めされ、11日頃からようやく現地入りしていた。

 調査実習の手法は、対象者たちの生活に参加する「参与観察」と、当事者たちの世の中の見方・考え方・価値観などのインタビューが主。発表テーマには、①「人とのつながり」(島の子育て・年配者・地元愛・共食・島外から来た人)②「伊仙の特徴」(人間関係・地域踊り・闘牛)③番外編(お風呂屋さん・僕にとっての教育)などを掲げた。

 合計特殊出生率・日本一(2003年~07年、08~12年の2期連続)関連「島の子育て」に対する発表では、「子宝の島・徳之島では『子育ては楽しい』という大人たちが多い」。背景に、①子どもの意志のもと伸び伸びと育つ(大人が叱る場面が少ない)②大人と子どもの垣根が低い(地域の大人とのつながり)③判断力・解決力など「生き抜く力に」―など論考も。

 長寿者の割合が高い地域性、年配者たちの特徴については、①人と人のつながり(共助の関係性の中で役割を与えられている)②自然とともに(自ら育てて収穫し、加工する)③ご先祖様と子孫たちの系譜の中で人生を肯定し未来へ期待。その上で「生きることが生きがいに」とも。

 県外から来た人々に対しては「基本ウエルカム。来るものを拒まない」。背景に①垣根のあいまいさ(島立ちの経験・世代を超えた交流)②島のDNA(損得を考えない文化・島と自分の同一視)。

 「結(ゆい)」の精神(相互扶助)の形成では、①受け継がれてきた人間性(人を助けようとするオープンさ)②限られた選択肢の中で(互いに監視して助け合う)③助け合いが商業化することへの懸念(お金を介さない助け合いの充実)も強調する。

 ほか、闘牛に対する熱量には、①「命だから」(生き物を育てる覚悟と責任)②「ロマン」(牛にかけた熱量が勝利で報われた時)③「敬意」(家の名誉や牛主の努力を背負って闘う牛に対し)も挙げた。

 質疑では「私も外から来て3年半。伊仙町が、徳之島が好きでいっぱい勉強したが、5日間でここまで発表できるとは素晴らしい」など称賛も。森木教授は「日常生活にお邪魔する手法のフィールドワークだったが、温かく受け入れてもらえる度量、地域力にも感謝します」と話した。