ソテツの害虫

外来カイガラムシが付着した葉の周辺ではクロマダラソテツシジミ(若葉を食害するチョウ)も確認された

二つが同時にダメージか
龍郷町、集落放送やHPで適切防除周知

 奄美大島北部で確認されているソテツへの外来カイガラムシ(アウラカスピス ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)付着被害は、周辺では若葉を食害するチョウ・クロマダラソテツシジミも見られることから、「同時期に二つが被害を与えた」との見方が出ている。昨年秋から冬にかけて対策が進められた龍郷町では再び被害が出ている中、集落放送や町ホームページ(HP)を通して適切な防除を呼び掛けている。

 これまで被害が出ていなかった奄美市笠利町でも確認されるなど拡大している奄美大島の状況について、一般社団法人日本ソテツ研究会の髙梨裕行会長は「被害確認後、防除など対策を進めている現地の関係者などから情報収集したところ、どうやら同時期にクロマダラソテツシジミも来ているようだ。(自生地が残せなかった)台湾の場合もやはり二つが同時的にダメージを与えたと思われる。カイガラムシの絶対数を減らすために葉を落とす、そうするとソテツは新しい葉を出そうとするのだが、そこにクロマダラソテツシジミがやって来る」とし、被害の急速化の背景に「二つのダメージ」の可能性を考察する。

 クロマダラソテツシジミの成虫は体長10㍉と小さい。沖縄県のHPによると、原産地は台湾、中国、フィリピンなどアジアの熱帯・亜熱帯地域。幼虫は若い葉のみを食べ、展開葉の先端、葉縁が淡色になり縮れる。大発生時には葉の軸だけが残り、頂部の海綿状の中も幼虫の食害によりかく乱。連続して被害を受けたソテツは枯死することがあるという。奄美大島北部ではCAS被害を受けたソテツ周辺で、このチョウが飛来しているのが目撃されている。

 ソテツへのカイガラムシ被害が表面化した昨年11月、対策徹底へ全世帯にチラシを配布した龍郷町は、町有地に植栽されたソテツで再び被害が出ている葉を切除するなど対策を進めるとともに、町民にも対策の必要性の周知を図っている。「急激な増殖、被害拡大が懸念される」として適切な防除を求めている。具体的な方法は被害葉の除去・焼却のほか、浸透移行性の薬剤(マツグリーン液剤2など)散布がある。