徳之島町井之川 4年ぶり一夜越し「夏目踊り」

一家一族ごとの宴でにぎわいが戻った「浜下り」行事=19日午後6時過ぎ、徳之島町井之川海岸

4年ぶりに復活、一夜越しで始まった「井之川夏目踊り」=19日午後11時頃、徳之島町井之川

「祖先の魂の遺産」復活

 【徳之島】徳之島町井之川集落(保和廣区長、175世帯・341人)の一大伝統行事である「浜下=はまう=り」が19日夕から始まった。住民たちが親類縁者ごとに海岸に集い、祖先や豊作の神に感謝しながらの宴で絆を確認。午後10時過ぎからは、老若男女が夜を徹して情熱的な歌・踊りで家々を巡る名物の「夏目踊り」(県指定無形民俗文化財)が4年ぶり復活した。

 「浜下り」行事は沖縄・奄美地域に限定的に伝わる「ニライカナイ信仰」に、祖霊祭祀=さいし=や稲作の豊作感謝などが結び付いた複合的な祭りともされる。古来の開催日柄は旧盆後のひのえ・ひのと・つちのえの3日間だった。1999年からは、帰省者や住民たちも参加しやすいよう月遅れ盆後の土・日曜に引き寄せての開催に定着。夏目踊りは、同保存会(会長・保区長)を中心に小・中学生への伝承活動も伝統的に継続して守っている。

 快晴下の日差しが和らぎだした午後5時頃以降、井之川海岸には住民たちが三々五々訪れた。コロナ禍を乗り越えてかつてのにぎわいが戻り、一部では伝統の「浜ヤドリ(仮小屋)」を模した囲いやカマドも復活。新生児たちの健やかな成長を祈る「ミイハマクマシ」(新浜踏ませ)などの後、一家一族の親類縁者たちで酒食を持ち寄っての宴が続いた。

 海岸から帰宅して一息ついた午後10時過ぎ、踊り連の呼び込みの意もあるという伝統歌謡「でんだらこ」の軽快な唄と太鼓の音が4年ぶりに流れた。町内外からの見物客たちでにぎわう中、集落内3班「宝島=ふーしま=」「伊宝=いふ=」「佐渡=さどぅ=」ごとの夏目踊りがスタートした。

 「あったら七月」など男女掛け合いの情熱的で律動的、パワフルな歌・踊りによる家回りは、一夜越しの20日午前10時頃まで続く。

 4年ぶりの復活に、夏目踊り保存会の町田進さん(75)=同町文化財保護審議会長=は「浜下り・夏目踊りは〝祖先の魂の遺産〟。私たちには大切に守り後輩たちに引き継ぐ義務がある。人間関係の希薄化が指摘される中、伝統行事は運命共同体の私たち集落住民たちの絆も固めてくれる」と話した。