対馬丸事件を未来へ継承

79年前と変わらぬ風景を前に生存者、救助した住民らの証言を読み上げる児童生徒ら(19日、宇検村宇検の船越海岸)

船越海岸前に建てられた慰霊碑に献花する児童ら(19日、宇検村宇検)

宇検村で交流事業 沖縄、奄美の児童生徒参加
慰霊碑に手合わせ祈り

 太平洋戦争末期、米潜水艦による砲撃で沈没した疎開船「対馬丸」の事件を学び、戦争の悲惨さ、平和の尊さを学ぶ交流事業が19日、宇検村で行われた。参加した同村、大和村、瀬戸内町と沖縄県の児童生徒らが同村の船越=ふのし=海岸に訪れ、慰霊碑に手を合わせ、犠牲者に祈りをささげた。

 疎開者1661人を乗せた対馬丸は1944年8月21日、長崎に向け那覇港を出港したが翌22日、悪石島沖で米潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没。多くの生存者、遺体が宇検村、大和村、瀬戸内町に漂着。判明している犠牲者数は1484人、うち学童は784人に上る(2020年9月現在)。

 沖縄県主催の同事業は17年、船越海岸に慰霊碑が建てられたことを機に企画され、翌年から実施。4回目を迎えた今回、奄美の小中学生23人が参加。沖縄県からは小中学生16人ほか、保護者14人が宇検村を訪れた。

 船越海岸で参加者は、当時の生存者、救命や遺体の埋葬にあたった住民らによる証言記録を読み上げ、戦争の悲劇に思いをはせ、慰霊碑に献花とともに黙とうをささげた。

 村生涯学習センター元気の出る館で行われたワークショップでは、対馬丸事件を未来へ継承する理由・方法を考察。子どもたちは保護者らとともに「教えられた人が教えていく」「授業の一環として取り上げる」など意見を発表。参加者同士で考えを深めた。

 那覇市立安岡中学校2年の喜友名結さん(13)は「奄美でも慰霊碑が建てられ、二度と起きてはいけない事件と知った。戦争を知らない私たちが次の世代に伝える方法として、自分だったらどうすると考えていきたい」と話した。

 沖縄県女性力・平和推進課の大湾朝貴副参事(50)は「戦争の話は子どもたちにとって怖いもので、平和学習の開催に試行錯誤している。しかし、交流が伴う学習は子どもたちも楽しみながら学んでいる様子。今後も続けていきたい」と語った。