2023年夏 奄美ワンダーランドを行く カトリック教会編②

アメリカの聖マテオ教会から寄贈された名瀬聖心教会の祭壇

故ケネディ大統領ゆかりの祭壇

 名瀬聖心教会は、「レンガみどう」と親しまれ、1922年献堂(キリスト教で新築の会堂のこと)。45年には戦災で廃墟に。49年に再建された木造教会も55年、名瀬の大火で焼失。現在の教会は65年に完成している。その新しい同教会に故ジョン・F・ケネディ大統領ゆかりの祭壇が贈呈されている。そのいきさつを鹿児島市のラ・サール中学校・高校の諏訪勝郎非常勤講師が「カトリック新聞」(2022年)に詳しく紹介している。

 それによると、「教会再建が計画段階だった62年、奄美宣教に従事するルカ・ダイジャック神父が休暇のため再建の寄付・支援等も兼ねて母国アメリカへ帰国。ワシントン大司教区のカテドラル聖マテオ教会を訪問し、計画中の教会の祭壇について相談した。同教会主任司祭は祭壇の寄贈を快諾。64年2月2日、祭壇は米軍艦ココダ号によって名瀬港に到着。信者らの手によって港から完成間近な教会まで運ばれた。聖マテオ教会は、63年に暗殺された故ケネディ大統領の葬儀ミサが行われたことで知られる」。

 また、「祭壇は縦1㍍、横2・4㍍、高さ1㍍。イタリア産大理石。正面には『十字架の道行』図のレリーフ。内容は、左端に嘆き悲しむ聖母マリアと付き添うマグダラのマリア。中央に十字架を担い倒れるイエス。その左にイエスを扶助するキレネ人シモン。右にはイエスの顔の血と汗を拭うベロニカ。この3人をローマ兵が取り囲み、『十字架の道行』の複数の配列主題を一つの画面で表現している」。

 「その祭壇は、米国の教会が当時、奄美で宣教に励む司祭たち、信仰に生きる信者たちをいかに支えようとしたかを今に伝える。長く奄美市議を務め、同教会の信徒総代だった平敬司さん(故人)は『祭壇の来歴は奄美のカトリックの誇りとして感謝の念をもって語り継がれてきた。信仰の有無にかかわらず、米日両国民の友好を表すものとして意味がある』と語っている」

 「2013年11月15日、故ケネディ大統領の長女、キャロライン・ケネディさんが駐日大使に着任。平さんを始め、島民の多くが大使の来島を願って、その機もうかがわれたが、諸事情により、スケジュール調整がとん挫したと聞く」と伝えている。

 諏訪さんは、この祭壇が聖マテオ教会の主祭壇ではなく、脇祭壇であることも突き止め(久保芳一古田教会協力司祭)、同新聞に「全国でも類まれな祭壇として同教会の信者の誇りとなっている」。そして、「キャロラインさんの来島が実現していたら、信仰の如何にかかわらず、全島が喜びに沸いたに違いない」と綴っている。