短編映画『つむぎのうた』に感動

徳之島の魅力を広げたい―。短編映画「つむぎのうた」など上映後、次回作へ舞台発表も(円内は野中加那さん)=22日、徳之島町文化会館

 

 

「徳之島の魅力広めたい…」
同島出身高校生(当時)が監督・主演
次回作舞台あいさつも

 

 

 【徳之島】映画を通じて徳之島の魅力を広げたい―。同島出身の高校生(当時)が監督・主演し、スタッフもオール徳之島で制作に挑んだ短編映画『つむぎのうた』本編および同メイキングドキュメンタリーの上映会が22日夜、徳之島町文化会館であった。クラウドファンディングで支援を募っての初挑戦だが、クオリティの高さで約350人の観客を感動させた。

 短編映画「つむぎのうた」(約30分)は、徳之島町諸田出身で同町井之川中から東京の高校に進学、女優を目指して活動中の野中加那さん(19)が「徳之島の魅力を広げる映画制作を」と一念発起。自ら発起人(当時高校生)となって仲間を集めて監督・原案・主演・主題歌も担当。他キャスト(益本紀枝さん・大樂大聞さん)、脚本・音楽(寶田健二さん)、助監督(内山亮平さん)ら制作スタッフも徳之島出身および在住者のみで構成した。

 ストーリーは、コロナ禍真っただ中の東京。ミュージシャンを夢見て徳之島から上京したつむぎに、両親を亡くしたつむぎを育ててくれた祖母の訃報が届く。コロナ禍で帰島もままならない中、やっとの思いでたどり着き、遺影と対面。悲しみに暮れる中、祖母の日記を見つける。そこにはかけがえのない日々が綴られていた…。約1年かけて制作したヒューマンドラマだ。

 徳之島での撮影中、野中さんが東京で一緒に暮していた祖母(父方)が急逝し、スタッフ全員にも大きな衝撃となった。奇しくもストーリー上で祖母の訃報を受けるシーンの撮影日だった。「制作中止」も検討したが、野中さんの意向で撮影を敢行。演技を超越した号泣シーンは観客の涙を誘った。

 メイキングドキュメンタリ―では、その壮絶な制作経緯をはじめスタッフ・キャストのことなど、当時18歳の野中さんへのインタビューを中心に綴った。

 上映後の舞台あいさつで野中さんは「他人に観てもらえる作品になるとは思ってなかったので本当にうれしい」。東京在住の役者たちもキャストに加えて監督する次回作「水平線の向こうまで」(17~27日現地ロケ中)に向けては、「徳之島を知ってもらい、島を自慢できる作品にしたい」と笑顔を輝かせた。

 脚本・音楽・撮影に奔走した寶田(ほうだ)さん(38)も「想像以上の来場者に感動。何か面白いことを計画すれば島の人たちだけでも実現できることを伝え、この徳之島を盛り上げたい」と振り返った。

 観客の1人・天城町の団体職員平石神威(かむい)さん(24)は「高校生(当時)で監督・主演し、女優としての役柄もかなえるとは正直いってすごい。芸能事務所に勤務経験があるが、高いクオリティで完成された作品だと思う」と話した。

 本編はYoutube【高校生監督による、世界自然遺産の島「徳之島」を舞台にしたショートムービー『つむぎのうた』】でも公開中。クラウンドファンディングは「CAMPFIRE 地元徳之島の魅力を映画で広めたい!」。