2023年夏振り返る

奄美群島の夏祭りが各地で復活し、あちこちで島民の歓声が響いた

台風6号、影響長引く
4年ぶり制限なし夏祭り復活、各地で歓声

 きょうから9月。長かった夏休みも終わり、新学期が始まった。今年は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行して初めての夏。制限を伴わない、いつもの夏が4年ぶりに帰ってきた。奄美群島では台風6号の影響が長引いたものの、各地では夏祭りやイベントが復活し、島民らの声でにぎわった。期間中は行楽地や宿泊施設などで人が混み合うなど、観光需要の回復へも兆しがみられた。日常を取り戻しつつある奄美の夏を振り返る。

 ■台風6号

 7月28日に発生した大型の台風6号は、非常に強い勢力で奄美地方に接近した。台風はノロノロとした動きで、西へ東へと迷走。強風域を抜ける8月9日まで、暴風や高波が長期間にわたって続くなど、被害や打撃は多岐に及んだ。

 県のまとめによると、奄美群島12市町村では重傷者2人、軽傷者1人を確認。住家被害は、一部損壊4件、床上浸水3件、床下浸水9件だった。

 農業関連では、サトウキビが9200万円、喜界町の白ゴマが5900万円といった被害が報告。施設を含めた県全体の被害総額は17億円に上った。

 交通機関では、海、空、陸全ての便で運休・欠航が続き、大勢が足止めを食らった。全国総文祭に出場した沖永良部高校エイサー部の生徒を含めた帰宅困難者も相次いだ。

 フェリーや貨物船では7月29日の寄港を最後に、12日間の欠航となった。この間、群島内のスーパーや商店では品薄が続き、休業措置を取る店も少なくなかった。商戦を控えたスプレーギクなどは出荷が滞り、マンゴーやパッションフルーツなどの果物類も大幅な値崩れを起こすなど、さまざまな産業が打撃を被った。

 ■夏祭り

 奄美群島では、宇検村を除く11市町村で夏祭りが計画され、9市町村が開催を終えた。プログラムの短縮を行わない通常開催はほとんどの自治体で4年ぶり。台風6号の影響で延期があったものの、舟こぎやパレード、踊りといったいつもの祭りの復活に、多くの観衆が声を上げた。

 台風6号の接近に伴い4・5日の「喜界町夏祭り」が2週間繰り下げた。3~6日の「奄美まつり」は、舟こぎ競争や花火などが順延となり、八月踊りやパレードなどは中止した。

 徳之島町の「どんどん祭り」は10月1日、伊仙町の「ほーらい祭」は11月3日に催す。宇検村は「やけうちどんと祭り」を中止し、10月1日に「ウケングルメフェスタ2023(仮称)」として代替イベントを予定している。

 奄美群島の夏祭りはコロナ禍の影響で2020年以降、中止や縮小による開催が続いていた。今年は、終戦の日の戦没者慰霊祭や追悼式も再開し、集落での豊年祭なども各地で復活している。

 ■離島甲子園

 奄美初の全国離島交流中学生野球大会(通称・離島甲子園)が21~24日の4日間の日程で開催。奄美大島4会場で過去最多となる1都8県の25チームが熱戦を繰り広げた。奄美群島からは奄美市選抜(シャリンバイズ)、同(ガジュマルズ)、龍郷選抜、瀬戸内町選抜、徳之島選抜の5チームが出場。トーナメント形式で争った。

 決勝戦は、壱岐市選抜(長崎県)と石垣島ぱいーぐるズ(沖縄県)が対戦。2―1の接戦を制した壱岐市選抜が優勝。奄美勢では、瀬戸内町選抜が3位と躍進し、奄美市選抜(シャリンバイズ)が準々決勝に駒を進めるなど健闘した。

 大会では、敗れたチームによる交流戦もあり、パーティーや野球教室では約390人の出場選手らが和やかな表情で親睦を深めるなど、多くの球児が夢や希望に満ちていた。

 ■その他

 全国高等学校総合文化祭の郷土芸能部門が7月30日と8月1日に奄美市であった。沖永良部高校エイサー部の18人が伝承の部の県代表としてひのき舞台に立った。島民の一生を表現した演目で、全国に雄姿を刻んだ。

 瀬戸内町では、古仁屋中学校相撲部が全国中学校相撲選手権大会の団体戦で全国制覇。40年ぶりに優勝旗を持ち帰った。メンバーの重村鴻之介君(3年)は個人戦でも2年連続の準優勝を果たした。

 東京で行われた小中学生の民謡日本一を競う民謡民舞全国大会は、小学校4~6年の部で喜界小6年の久原奈子さんが日本一に輝いた。

 10月開催の燃ゆる感動かごしま国体・大会に向けた「炬火(きょか)リレー」では、7月24日から与論町を北上。一部は中止したが、公募選手らが灯火をつないでオール鹿児島の結束をアピールした。

 この夏は、コロナ禍の制限の解除に伴い、せきを切ったかのように観光客も訪れた。奄美群島を発着するJALグループの盆期間の旅客数は、2019年を上回った。宿泊施設やレンタカー、飲食業者などからは、立て直しへの手応えを語る声も多く聞こえていた。