郷土料理家の恵上さん

「なりがゆ」などを試食する受講生と講師の恵上さん(右端)

 

 
第4回あまみならでは学舎 島料理に込めた思い伝える
「奄美の食文化、世界に発信したい」

 

 奄美の自然や歴史・文化などさまざまな分野で活躍する人たちを講師に招き、島の魅力について学ぶ「あまみならでは学舎」の2023年度第4回講座が2日、奄美市名瀬の県立奄美図書館4階であり、約70人が受講した。同市で地場産食材や手作り、彩りにこだわった島料理を提供する「なつかしゃ家」を経営する恵上イサ子さん(72)が「今だからこそ伝えたい食への想(おも)い」を演題に、郷土料理に込められた先人たちの知恵や思い、奄美の魅力について語った。

 同学舎は同図書館主催。講師を務めた恵上さんは笠利町出身。中学校の校長を退職後、2012年に同市名瀬柳町で古民家を改築した「なつかしゃ家」をオープン。母から教えてもらった郷土料理などを提供し、食を中心に奄美の伝統文化の継承活動を続けている。22年には郷土料理のレシピ本『健康・美肌・長寿の島の贈り物 奄美ごはん』を出版した。

 恵上さんは「食べるのも大変な時代に女手一つで育ててくれた母親に感謝している。どんなに貧乏でも、心までは貧しくならなかったのは、母の愛情のこもった料理があったから」とし、「食はその人の人生そのもの。先人の知恵を忘れることがないよう、島料理を次の世代に伝えていきたい」などと話した。

 また、定年後の夢としていた食文化を伝える懐かしい場所をつくることや、奄美料理のレシピ本を出版するといった夢をかなえたことから、「次の夢は奄美の年中行事に合わせた料理を通して、奄美の食文化を日本、世界に広めていくこと」などと話した。

 この日の講座では、恵上さん手作りの「なりがゆ(ソテツの実のおかゆ)」や「いゅみそ(魚みそ)」、「わりこモチ(よもぎ餅)」が出席者全員に提供された。恵上さんは「全て奄美の食材で作られている。地場産のものを使っているので、台風で船便が欠航しても、店で料理が提供できないことはなかった」などと話し、地産地消にこだわった料理への思いを語った。

 受講した大島高校2年の峯和奏(わかな)さん(17)は「学校の授業で郷土料理について調べる機会があり興味を持った。手間暇かけた恵上さんの料理が、多くの人に愛される理由が分かった。これからももっと料理を覚えたい」と話し、同校2年の菊野夏音(かのん)さん(17)も「島料理の魅力を同世代の若者に伝え、食べてもらえるような活動をしていきたい」と話した。