大島郡医師会講演会

血液備蓄所再設置に向け実情を語る大木浩医師(8日=アマホームPLAZA)

血液備蓄所再設置へ 市民の意見醸成訴え
緊迫の医療現場を語る
県立大島病院・大木医師

 大島郡医師会は8日、4年ぶりとなる「2023年度救急医療講演会」をアマホームPLAZA(市民交流センター)で開いた。県立大島病院・大木浩麻酔科部長が「離島の緊急手術と輸血供給体制」として、同病院での緊迫した実情を話し、「奄美群島には血液備蓄所の再設置が必要」と訴えた。緊迫した医療現場の実態に触れた聴講者からは驚きの声が挙がっていた。

 大木医師は、離島やへき地においてのみ使用が許可される院内採血の「生血(なまち)」と、「日赤血」と言われる3種類の血液製剤について説明。日赤血は、マイナス20度以下での保存が必要な「新鮮凍結血漿(けっしょう)」や採決後4日間しか使用できない血小板製剤があることなどを説明した。

 医療現場の状況について、「(奄美大島では)ただちに必要な輸血が手に入るまで 10時間かかる。与論島では23時間以上になる」と話し、「奄美大島地区緊急時供血者登録制度」を使った生血の確保と、日赤血の両輪が不可欠と訴えた。

 講演を終えた大木医師は、18年4月に撤退した血液備蓄所に触れ「再設置が必要」と繰り返し、「(大島郡)医師会では厚労省や日赤に要望し続けてきた。5市町村の首長と県との意見交換会も行った。行政や保健所、消防も加えた検討会も複数回行っている。6月には厚生労働省の副大臣との面会も果たした」と語った。その上で「市民の声が必要。足りないピースは地域の人たちの強い気持ち」と実現への道筋を語った。

 また、7月末に発生し影響が長引いた台風6号では、小康状態となった期間に血液を調達する「綱渡り状態だった」ことも明かした。大木医師は「人の命が失われる前に実現しなければならない。そのためには市民の意見の醸成が不可欠」と重ねて訴えた。

 帰省中に聴講したという鹿児島大学医学部1年・上野凛さん(18)は「具体的な事例を聞き驚いた。島に帰っている間に聞けたことは有意義」とし、「まずは献血に協力する」と話した。