伊仙町学習講座

伊仙町の重要遺跡調査の功労者2氏が特別講演した「徳之島のいろは」講座(9日、同町ほーらい館)

 

 

 

重要遺跡からの土器や陶器など出土品の展示、説明会も

 

 

「ダイナミックな南島歴史」に焦点
「徳之島のいろは」新里貴之、亮人両氏が特別講演

 

 

 【徳之島】伊仙町学習講座の2023年度第2回「徳之島のいろは」(町教育委員会主催)が9日、同町ほーらい館会議室であった。「ダイナミック!南の島々の歴史」に焦点を当て、同町の重要遺跡の調査に貢献した新里貴之沖縄国際大学准教授(51)と元同町学芸員の新里亮人熊本大学助教(46)の両氏が特別講演。貝塚時代後期に始まっていた「遠隔地交易、集落機能、社会の複雑化」や、グスク時代の「島嶼(しょ)別分業化。琉球王国成立のけん引」論などを説いた。

 「地域の特色ある埋蔵文化財活用事業」の一環。町史編さん委員でもある両氏を特別講師に招へいし、考古学・歴史ファンなど定員の約40人が聴講した。

 貴之氏は「貝塚時代の地域間交流」をテーマに、①琉球列島へのヒトの渡来②土器文化の起源③貝塚文化と他地域との交流―の特徴などを解説。貝塚時代前期(縄文~弥生時代相当)に関し、同町の「面縄貝塚」「トマチン遺跡」など出土品分析も例に、「複雑な社会が安定化すると遠隔地交易を支えることも可能になった。土器だけではなく黒曜石(佐賀県腰岳産)やヒスイ(新潟県糸魚川産)、鹿の骨なども入手。加工などで集落機能を動かすなど社会が複雑化した」と述べた。

 当時の世相としては「狩猟採取社会でその日その日を生きたのではなく、ちゃんとした安定的な社会になるために動いた時代と考えられる」とも。

 亮人氏は2004年4月から18年3月末まで同町教委学芸員として「面縄貝塚」と「徳之島カムィヤキ陶器窯跡」両遺跡の国指定史跡の実現にも大きく貢献した。

 「グスク時代から琉球王国の時代へ」をテーマに①産業の始まり(琉球列島の農耕・鍛冶・窯業)②交流・交易(東アジア全域から琉球列島へのモノの動き)③社会組織(島々でのグスクの出現から琉球王国の建国)―について持論を交えて解説した。

 グスク時代(鎌倉時代相当)の奄美群島については「確実に起こるのが労働の分業という社会運動。特定の技術を持った人が特定の場所で特定のモノを作る分業。グスク(城塞)が築かれて階層化し、人の上下関係が非常に激しくなっていった」。それぞれの島の個性(徳之島=窯業、喜界島=製鉄など)と産業が「うまくリンクし、琉球建国に臨む文化をけん引。島の連結性で社会が成り立っていたことが分かると、非常に大きなダイナミックな歴史になると思う」。

 分散していた生業はその後、「琉球(王国)が成立すると恐らく全て沖縄本島に集約。産業の集約が王権、琉球王国成立に対応していったと考える」。そして「産業の島嶼別に分業したのがグスク時代。産業の一極集中が王国。島のことだけでなく、周辺の島々と比較し、それぞれの個性を見いだすことが今後は大事になる」とも強調した。

 会場ロビーでは町内主要遺跡の出土品(土器・貝・骨製品など)の展示、説明会もあった。

 聴講者の一人で大阪から町内に帰省中の久保博樹さん(68)は「カムィヤキ陶器など遺物や交流のすごさなど歴史ロマンを感じた。ふるさとのことをもっと勉強したい」と感動していた。