40年の歴史に幕下ろす

40年の歴史に幕を下ろした喫茶「チャンピオン」(右から)店主の栄美智子さんと娘の潤井多香子さん(15日、奄美市名瀬真名津町)

 

 

この日、最後の来店となった約30年来の常連客から花束が手渡された(15日、奄美市名瀬真名津町)

全てのお客様に「ありがとう」
名瀬の老舗喫茶「チャンピオン」

 開店以来、地元住民を中心に、多くの人々に愛され続けた奄美市名瀬真名津町の老舗喫茶「チャンピオン」が15日、40年の歴史に幕を下ろした。閉店を迎えた最終日も多くの来客、注文が寄せられ、店主の栄美智子さん(75)は「ここまで続けられたのは、全てお客様のおかげ。ありがとうと伝えたい」と感謝とともに、これまでの歩みを振り返った。

 「チャンピオン」は1983(昭和58)年の旧名瀬市時代、当時では珍しい「ラーメン」も頼める喫茶店として誕生。料理が得意な初代店主、夫の秀彦さんが厨房に立ち、配膳を担う美智子さんとの夫婦の「二人三脚」でスタート。午前6時から午後10時まで、年中無休の営業を始めた。

 麺類や揚げ物、丼など豊富なメニューのみならず、「並盛注文もごはんは大盛り」「みそ汁は常にアサリ入り」など粋な計らいが評判を呼び、地元民、近くの県立大島病院に通う市内外の来院者など、多くの客が足を運んだ。次第に常連客は、お酒をたしなみ接客する秀彦さんを「マスター」、夫に代わり料理を振る舞う美智子さんを「ママ」と呼び慕った。

 しかし2008年、秀彦さんが病に倒れ、59歳の若さで他界。突然の別れに、1か月ほど寝込んだという美智子さんだったが、娘の潤井(うるい)多香子さん(52)と共に営業を再開。家事や子育ての合間に買い出しなど手伝う多香子さんとの新たな親子の「二人三脚」の下、秀彦さんの遺志を継いだ。

 コロナ禍も営業時間を短縮しながら、常連客らの存在を支えに乗り越えたが、ここまで病気一つない美智子さんが「元気なうちに」と閉店を決めたのは、今年の夏。しかし、「お客様のことを思うと申し訳ない」と気を遣い、直前まで閉店の話を周知することができなかったという。

 「店じまいを知らない常連さんも多いはず」と、最後の営業を迎えた15日だったが、人づてなどで知ったとみられる多くの常連客が電話で労い、注文、来店。さらに店に直接、感謝の花束を持参する常連客の姿も見られた。

 美智子さんは「40年間、いろいろな人が集まる場所で、たくさんの人と出会え、楽しく過ごせた。夫のおかげであり、娘のおかげであり、そして、全てのお客様のおかげ。皆さんにありがとうと伝えたい」と話し、この日、思い出話に花を咲かせた、最後の来店となった常連客を笑顔で見送り、店を閉めた。