希少野鳥の未来を考える市民講座

オオトラツグミ、アマミヤマシギについて報告
鹿児島大学で 奄美野鳥の会・鳥飼副会長

 【鹿児島】日本動物医学会主催の第29回市民公開講座が24日、鹿児島市の鹿児島大学稲盛会館であった。「希少野鳥の未来を考える 保全活動の現状と課題」と題し、5人のパネリストがトキ、コウノトリ、出水のツルなど国内の希少野鳥について講演。NPO法人奄美野鳥の会の鳥飼久裕副会長=写真=も登壇し、奄美の野鳥の事例を報告した。

 鳥飼副会長は、奄美の固有種で環境省の保護増殖事業の対象種となっているオオトラツグミとアマミヤマシギの保全状況を報告した。

 オオトラツグミは、1994年から同会が中心となって一般市民も参加して生息調査を毎年実施しており、今年で30回を数えた。90年代初頭には100羽程度まで激減していたとされていたが、現在は推定で2000―5000羽とされるほど生息数、生息分布域が拡大していることが長年の継続的な調査で分かった。その理由は「林業の衰退による広葉樹林の回復と外来種のマングースの駆除の成功にあると考えられる」という。

 一方、アマミヤマシギは01年から保護増殖事業を同会が受託し、生息数や生態調査を定期的に実施している。現在の生息数は約1万7000羽程度で顕著な増加傾向は見られない。繁殖地がどこなのかも不明で、冬季には林道での出現数が激減するため、一部は沖縄本島など他の島へ渡っているのではないかとも考えられていた。

 今年1月に沖縄で捕獲したアマミヤマシギ3羽にGPS発信器を取り付けて追跡した結果、1羽が2月に奄美大島まで渡ったことが確認され、海を渡る能力がある個体がいることが分かった。「どういう個体が、どのぐらいの割合で渡っているのか、奄美と沖縄という同じような環境の島間の渡りにどのような意味があるか」など、今なお不明な点も多く、保護増殖活動の上でも解明したい課題が多く残っているという。