「ショチョガマ」「平瀬マンカイ」 龍郷町秋名・幾里

約120人が参加して行われた「ショチョガマ」


白装束に身を包み、神平瀬で豊作を祈願するノロ役の女性たち

4年ぶり同日開催
伝統行事、文化を継承

 国の重要無形民俗文化財に指定され、旧暦8月初丙(ひのえ)に開かれる龍郷町秋名・幾里集落のアラセツ(新節)行事「ショチョガマ」と「平瀬マンカイ」が25日、4年ぶりに同日開催された。地元住民や観光客、海外メディアも多数訪れ、伝統行事への関心の高さを見せた。

 五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する「ショチョガマ」は早朝、同集落の山の中腹であった。午前6時11分の日の出時刻に合わせて行われ、設営作業に参加したボランティアを含む約120人がわらぶきの片屋根に上がった。

 午前5時50分、片屋根の先頭に立つ男衆がチヂンをたたき観衆に祭りをふれる。神事を取り仕切るグジ役の窪田圭喜さん(82)が赤飯・ミキ・焼酎をささげ、日の出とともに祭りが始まった。

 ドンドドンというチヂンの音が響き、八月踊りで歌われる「アラシャゲ」など7種の歌とともに、片屋根は次第に傾いていった。

 6時30分頃ひときわ大きくなった「ヨラ、メラ」の掛け声とともに約7㍍の本柱が音を立て、豊作の吉兆とされる南側に倒れた。その瞬間、祭場は拍手に包まれ、わらの上で輪になって八月踊りが始まった。

 片屋根を見下ろす崖の上から見守った窪田さんは「4年間は寂しかった。久しぶりの開催で活気があり、元気が出た」と感慨深げに語った。

 祭りは、産まれたばかりの赤ちゃんを乗せると健康に育つと伝えられている。2歳の瑛大ちゃんを抱いて屋根に上がった祖父・隈元和範さん(64)、父・大貴さん(35)は、「ようやく乗せることができた。最後まで泣かなかった」と親子で頬を緩めていた。

 午後4時からは、秋名湾西側の海岸で、向かい合う二つの岩で歌の掛け合いを行う「平瀬マンカイ」が行われた。

 しめ縄が張られた神平瀬には、白装束に身を包んだノロ役の女性5人、女童(メラベ)平瀬には男性3人(ノロの補佐役、シドワキ・ウッカム・グジ)と女性4人。女童平瀬の女性はチヂンを打ち鳴らし、歌の掛け合いが行われた。

 女童平瀬で男女が輪になり踊り始めると、神平瀬のノロ役は岩に座り、海のかなたのネリヤカナヤに向かい豊作を祈願した。

 浜に下りると地元保存会も参加し33人で「スス玉踊り」など八月踊りを披露し、浜を埋め尽くした観衆から拍手と歓声が沸き起こった。

 一連の行事を終え保存会の隈元信一郎・幾里区長(64)は「観客も多く盛り上がった。これからは若い人と一緒に文化を継承していきたい」と語った。