「一度いふて」を奉納する二番組(29日、与論町地主神社)
38年間踊り手を務めている黒田茂實さんに感謝状が贈られた
【沖永良部】1993年に国の重要無形民俗文化財に指定され、今年で30周年となる与論町の「与論十五夜踊り」が旧暦8月15日にあたる29日、同町の地主神社で奉納された。神社周辺には屋台が並び、ライブ演奏など各種イベントも催され、多くの家族連れでにぎわった。
1561年に創始されたといわれる与論十五夜踊りは、毎年旧暦の3、8、10月の15日に奉納される。踊り手は、寸劇仕立ての「一番組」と手踊りや扇踊りを見せる「二番組」に分かれ、二つの組が交互に踊る。8月の祭りは、疫病や害虫、干ばつ、台風から島を守るために行う。3月は五穀豊穣(ほうじょう)や無事安穏、10月は年中守護の謝恩の意味が込められている。
今回、子どもたちにも祭りに参加してほしいと、屋台やステージイベントに加え、各家庭の軒先に置いたお菓子を子どもたちが持って帰る十五夜の伝統風習「トゥンガトゥンガ」にちなんだコーナーなどを準備した。
この日は、二番組と一番組が合同で奉納する雨乞いの踊り「雨賜(あみたぼう)り」を皮切りに、「一度いふて」「三者囃子(はやし)」「二十四孝」などが披露され、演目の合間には地元出身シンガー・ソングライターの川畑アキラさんのライブで盛り上がった。
ライブ後は「獅子舞」に続き、無病息災を願う綱引きも行われた。
「トゥンガ」コーナーに立ち寄った子どもたちはお菓子と一緒に、屋台で使える割引券をうれしそうに受け取っていた。
祭りでは、文化財の保護活動に尽力しているとして、1985年から38年間踊り手を務めている黒田茂實さん(70)に同町の町岡光弘教育長から奄美群島文化財保護対策連絡協議会の感謝状が贈られた。黒田さんは「長い間やってきてよかった」と笑顔を見せた。
田畑克夫町長は「先人が462年間守ってきたこの祭りを将来の子どもたちへ引き継ぎ、未来永劫(えいごう)残していきたい」と語った。