実験中のスマート漁業について語る江幡恵吾准教授(1日、鹿児島大学奄美分室)
鹿児島大学ミッション実現戦略分プロジェクトは1日、奄美市名瀬港町の同大学奄美分室(紬会館6階)で「奄美群島周辺における自然環境保全とブルーエコノミー(海洋経済)」と題したシンポジウムを開いた。二部構成で行われ、一部は動植物モニタリングの取り組みなど、二部はデータを活用したスマート漁業の研究などの発表があった。85人が聴講した。
同プロジェクトは、同大国際島嶼(とうしょ)教育研究センター(島嶼研)と同大大学院理工学研究科地域コトづくりセンター(理工研)が2022年~26年度に実施。島嶼研は「生物と文化の多様性保全」、理工研は「地域創生」をテーマに研究を進めている。
世界遺産地域における固有種・外来種・生息環境・人為影響を体系的に調査する「統合型モニタリング」の構築を訴えた鵜川信・農学部准教授は、樹齢の長い森林ほど樹種の多様性が高く、スダジイ、モクタチバナ、イジュが優占種で、尾根と谷では種組成が変化すると発表した。
動物のモニタリングを実施した藤田志歩・共通教育センター准教授は、アマミノクロウサギは、谷地形の樹種の多い森林属性に多く生息すると発表した。
江幡恵吾・水産学部准教授は、海水温・塩分濃度・潮流を予測して漁業を行うスマート漁業を提唱。現在、奄美漁協笠利地区所属の漁船の協力を得て行っている「海の天気予報の構築」に向けた取り組みを発表した。
スマートCTD(測定器)が観測した深度・海水温・塩分濃度のデータは自動で同大に送信される。これを分析し海況(潮の流れ向きや速さ)を1週間先まで予測。予測データから出港の判断、漁場の選択ができ、燃油消費量の削減につながるという。
研究を主導した理工学研究科特任教授の山城徹理学博士は、「UターンやIターン者が漁業を選択する際、事前予測のデータがあれば勘や経験がなくても就業できる」と研究の将来像を話した。その上で、「まだまだデータが足りない。地元の理解と協力が必要」と語った。