タンカン生産安定へ対策検討会

奄美地域におけるタンカンの生産性向上に向けた取り組みが報告された室内検討会

単収アップへ作式変更報告
隔年結果対策で実証ほ 生産者同士の情報交換も

 県園芸振興協議会主催の奄美地域タンカン生産安定対策検討会が3日、始まった。初日は室内検討があり、2日目の4日は奄美大島島内3園地での現地検討を行う。隔年結果により年次の生産量の振れ幅の大きさ、栽培面積に対し収量の低さなどが奄美地域では課題となっている中、作式変更など技術改善による単収アップの可能性などが報告された。

 生産者や行政(県、市町村)、JAで構成する園振協支部の大島(奄美大島5市町村と喜界町)、徳之島(3町)、屋久島、そして本部(事務局・県農産園芸課)の果樹関係者が参加。奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった室内検討には約60人が出席した。

 鹿児島県の重点品目のタンカンは生産量、栽培面積で奄美地域が全国1位の規模を誇るが、収量や隔年結果といった課題を抱える。大島支庁農政普及課の川越尚樹課長はあいさつで、こうした課題改善・対策に向けて「園振協の本部と各支部が一緒になって取り組んでいるが、コロナ禍によって共有できなかった。2年半が経過し、ようやく実現できるようになり、成果と内容を共有し生産者目線で指導に生かしていきたい」と述べた。

 室内検討では、▽県のタンカン振興計画と生産状況(農産園芸課)▽県内他産地の現状・課題など(農業開発総合センター普及情報課、屋久島支部)▽奄美地域における生産性向上に向けた取り組み(大島支部、徳之島支部)―が発表された。大島支部の発表によると、年ごとの生産量の振れ幅(4割近い)が大きく、単収が低い(10㌃水準で400~500㌔㌘)生産実態のほか、産地構造では生産者の大半(95%)が零細規模で技術面の格差も見られる。一方で栽培面積の増加速度が県内一(津之輝を含むかんきつ全体)と「上昇気流で、まだまだ伸びしろがある」。

 こうした中、生産安定に向けては技術改善、人材育成・環境整備が進められている。発表した同農政普及課の松尾至身・主幹兼係長は技術改善のうち作式について、作式変更による早期多収の追求(実践)を報告。新規就農者の経営安定へ早期の収量を実現するため、樹木を低くし間隔を狭くする「低樹高計画密植栽培方式」での生産性向上へ、この作式を現在島内28戸に導入しているとした。また、着果管理の工夫ではクラスター果(複数の果実が集団的に固まった状態)の早期摘果(5月中下旬で)、粗摘果も6月下旬~7月上旬には行うなど「早め早め」の対応を挙げた。

 徳之島支部は、同徳之島事務所農業普及課の能口憲彦・技術専門員が発表。被害が出ているゴマダラカミキリ対策(効果的な防除法確立、各町による買い上げ)、樹齢10年を超えた樹木で目立つ隔年結果対策(摘果実証ほ設置、実証ほ場での栽培講習会)、新規栽培者向けの栽培講習会を報告した。

 意見交換では生産者同士の情報交換へ定期的に園を回り、お互いの取り組みを評価し合うことで技術向上・生産安定につながるとの指摘があった。大和村の福元地区では実践しており、新規就農者が実績ある生産者の取り組みを目の当たりにすることで「生きた教科書」として役立っているという。こうした生産者による園地ごとの組織的取り組みを「行政やJAなど関係機関でもバックアップしていこう」との呼び掛けもあった。