下水汚泥のバイオガス利用

名瀬長浜町の市名瀬浄化センター内に設置されたバイオガス発電施設

奄美市とプラント会社共同で 今月から発電開始
20年間で5千万円の収入見込む

 奄美市は、下水道汚泥処理の過程で発生するバイオガスを利用した発電事業を10月から開始した。上下水道のプラント建設などを手掛ける月島アクアソリューション㈱(TAS=本社・東京都)との共同事業で、同市名瀬長浜町にある市名瀬浄化センター内に発電施設を設置、売電により20年間で約5千万円の収入を見込んでいる。

 市は今年3月、TASとバイオガスを利用した発電事業を共同で実施する契約を締結した。事業は、市とTASが役割を分担する官民共同事業方式によるもので、処理施設で発生するバイオガスを市がTASに売却。TASは、浄化センター敷地内に5機のガスエンジン(25㌔㍗)を設置し発電、固定価格買取制度(FIT)を用いて売電収入を得る。

 6月から浄化センター内で整備を進めてきた発電施設がこのほど完成し、10月から発電事業を開始した。発電施設の建設、維持管理など、運営から事業終了後の施設撤去まですべてをTASが行う計画で、市の財政負担はなく、バイオガスの販売収入と土地の使用料として年間約250万円の収益を見込んでいる。

 下水汚泥処理の過程で発生するバイオガスは、未利用の再生可能エネルギー源であることから、持続可能な循環型社会の構築や地球温暖化対策の一つとして期待される。

 市下水道課などによると、バイオガスの有効利用により、一般家庭約220世帯分に相当する年間約79万㌔㍗の発電量が見込まれるほか、年間約307㌧の二酸化炭素削減にもつながるという。

 市は近く、現地でプラントの完成記念式典などを行うことにしている。供用開始から約40年が経過し老朽化が進む下水道施設の更新費用も財政を圧迫していることなどから、市下水道課は「導入により持続可能な循環型社会の実現とともに、下水道事業の新たな財源確保にもつながる」などと、発電事業に期待している。

 同市の下水道事業は、1983年度に名瀬地区で供用開始。2022年3月末の普及率は93%と全国的にも高い水準にある一方で、人口減少や節水技術の進歩などにより使用料収入は年々減少。10月からは下水道料金が値上げされるなど経営環境は厳しさを増している。