女子高校生が目にした復帰運動

経験談を交え復帰運動を語る石神京子さん(7日=奄美図書館)

婦人会「発言権なかった」
奄美図書館生涯学習講座 石神さん講演

 2023年度奄美図書館生涯学習講座(あまみならでは学舎)「奄美群島日本復帰70周年に寄せて」が7日、県立奄美図書館であった。旧名瀬市地域婦人団体連絡協議会の元会長で、大島女子高校在学時に復帰運動を体験した石神京子さん(85)が、当時の生活、女性の果たした役割などを講話した。教育関係者、歴史研究家、学生など77人が耳を傾けた。

 石神さんは、1938年(昭和13年)大和村生まれ。「ダレス声明」が出され奄美群島の日本復帰が実現した53年(昭和28年)、大島女子高校に入学した。入学前の51~52年は、日本復帰協議会が結成され署名運動が行われるなど、復帰運動が佳境を迎えていた。

 「校門の看板には『鹿児島県立』と書かれてあった」と振り返り、27回行われたとされる決起集会や断食などの写真を交え、当時の様子を語った。51年に結成された婦人会は「復帰運動のために作られたもので発言権はなかった」と当時の女性の立場を表現した。

 生まれ育った大和村の生活を、「名瀬から8里(約32㌔)。米兵を見たのは1回だけ。貧しく、山に分け入り何でも食べた」と話した。 テレビのインタビューで「私たちは日本人。アメリカ人にはなりたくない」と答える映像も紹介された。

 熱心に聞いていた大島高校1年・数原悠(はるか)さん(15)=瀬戸内町=は「年末に復帰を題材にしたミュージカルの語り部役を務める。当時の生活も、映像に映る建物や風景も(現在とは違いすぎて)実感が湧かない。経験者の話をもっと聞いてリアリティーを持って本番に臨みたい」と話した。

 講座を終え石神さんは、「復帰運動には女性の力も必要とされた。今では男性主体の政治的な話ばかりが伝えられている。女性も一緒に取り組んだことをもっと知ってもらいたい」と、語り部活動への意欲を語った。