「初代校長南郷光良の足跡」

伊津部小の中島校長に復刻した『南郷光良の足跡』を寄贈する南郷丈志さん(中央)と生野さん(右)

伊津部小創設の歴史など記す
小学校に20冊寄贈
宇崎氏著書を家族らが復刻

 奄美市立伊津部小学校の創設などに尽力して初代校長を務め、1977年3月に66歳で死去した故南郷光良氏の功績と同校の歴史などをまとめた『名瀬市立伊津部小学校初代校長 南郷光良の足跡』(宇崎太利著)の復刻版が完成し、11日、南郷氏の四男・丈志さん(73)(大和村大和浜)が同校を訪問して20冊を寄贈した。

 同書は同校の創立時に南郷校長の下で教壇に立った宇崎さんが2009年、同校の創立50周年を記念し、開校当時の教員や卒業生らの聞き取りなどをもとにまとめたもの。2年ほど前、南郷氏の三男・脩史(のぶひと)さん(75)(東京都在住)が実家の書棚に1冊だけ残された本を見つけ、「当時を知る人たちにも読んでもらいたい」と、このほど復刻版(A5サイズ、90ページ)として200冊を制作した。

 同校創設までの経緯や創立間もない学校運営に奔走する日々の様子などを写真などとともに紹介。校章や校歌に込められた思いや、同校の児童らに受け継がれてきた「さざなみバンド」の活躍を伝える当時の新聞記事なども掲載している。

 本の終わりには、著者宇崎さんの「伊津部小学校の栄達は、初代南郷校長先生の礎に成り立っているのである」の一文も記されている。

 この日は、丈志さんのほか、当時、教諭として同校に勤務した同市名瀬朝仁新町の生野千織さん(82)も同校を訪れ、本を手に取りながら創立当時の思い出などを語った。

 生野さんは「南郷先生は穏やかで子どもたちにも優しく接する校長だった。初任地で未熟だった私にも優しく教師としての心得などを教えてくださった。早くで父親を亡くしたこともあり、父親のような存在だった」と話した。

 丈志さんは「厳格な父で、家族の前で仕事の話をすることはなかったが、いつも家には大勢の人が集まっていた。今思うと、伊津部小の先生方といろいろ学校の話をしていたのだと思う」と当時を懐かしんだ。

 寄贈を受け、同校の中島清昌校長は「学校の歴史を知る上でも貴重な史料。図書室に置いて、児童だけでなく地域の人たちにも読んでもらえる機会をつくっていきたい」と話した。

 復刻版を制作した脩史さんは、同校への寄贈のほか、創立当時の教員やその遺族らにも無償提供。今後は、県立奄美図書館への寄贈も検討している。また、同市名瀬の楠田書店でも20冊ほど販売している。