ヤングケアラー「社会問題」

離島での実態調査の結果も報告され、それに基づいた支援の在り方を探った「ヤングケアラー支援フォーラム」

構造的なひずみ子どもへ 影響「勉強の時間とれない」 学習支援必要性
「社会全体で支援体制を」 奄美市で支援フォーラム

 NPO法人こどもエンカレッジアート(かごしまヤングケアラー支援ネットワーク)は21日、奄美市名瀬のAⅰAⅰひろばで「ヤングケアラー支援フォーラムⅰn奄美」を開いた。奄美群島でも行われた実態調査報告があり、家族の介護や世話を日常的に担う子どもは中学生が最も多く、影響では「勉強の時間がとれない」という学習面に及んでいる。奄美の事例も報告され、共働き世帯の増加など構造的なひずみが子どもたちに負担を与えていることから、「社会問題」と捉え公的な支援体制の必要性が上がった。

 公益財団法人キリン福祉財団の事業として採択され開催。同NPOは昨年度、直接現地に行って話を聞いての実態調査をしており、奄美群島では沖永良部島、徳之島、奄美大島を対象にした。県内での支援の輪を広げるためボランティア登録を進めており、実態調査を受けて今年度はボランティアによる学習支援などに取り組んでいる。

 フォーラムでは離島での実態調査結果を小浜洋一事務局長が報告。それによると、介護や世話をしているのは祖母や祖父(年齢60~70歳代)が最も多く、状況は①病気②高齢化③身体障がい―の順で、家事(料理や洗濯、掃除など)よりも家庭管理の方が上回った。理由は「親が仕事で忙しいから」や「親が入院しているから」が上位で、担うことによる影響は学習面のほか「友達と遊べない」「部活ができない」「進路について考える余裕がない」など。

 小浜局長は「求める支援では気軽に休憩できる機会が多く、行政や経済的支援を求めているが、ヤングケアラー支援に対する行政の関心が低い。学習支援でも国の補助制度があるものの、2分の1など補助率の問題からか県や市町村のほとんどが手を出そうとしない」と指摘した。

 発表は、NPO法人うなりネット理事長の倉井則裕氏が「ヤングケアラーとは…その実態」、鹿児島きょうだいの会代表の西野将太氏が自らの経験を踏まえて「ヤングケアラーの現状と課題」について行った。奄美の事例を紹介した倉井氏は、ヤングケアラーとなってしまう原因について「現在の日本が抱える構造的な背景がある」として共働き世帯の増加と核家族化の進行、離婚などによるひとり親家庭の増加などを挙げた。

 倉井氏は「貧困世帯だけでなく普通の家庭でも子どもたちが負担を担う事態が起きている。不登校にもつながっており学校の役割が重要だが、スクールワーカーやスクールカウンセラーだけでは不十分。社会問題という認識で介護保険制度のような社会全体で支援する体制を整えるべきではないか」と述べ、支援が実現しても「簡単に片付く問題ではない。マンツーマンで10年ぐらい、あるいはそれ以上かかる」として継続性を求めた。