奄美市で日本野蚕学会大会

商品見学で説明を受ける学会員ら

紬の産地で絹糸活用探る
南さんら特別講演も

 日本野蚕学会(小林淳会長)の第28回大会が23日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)で始まった。野外で蚕を育てる「野蚕(やさん)」に関する研究や技術の進歩を共有するのが狙いで、学会員ら約40人は大島紬の産地で歴史や文化継承について学び、絹糸の新たな活用の可能性を探った。24日まで。

 野蚕は、屋内で大量に育てる家蚕(かさん)とは異なり、屋外や自然の中で飼育する蚕のこと。独特の風合いが特長で、ワイルドシルクと呼ばれるなど珍重されている。

 学会は、1986年に研究会の発足を経て93年に日本学術会議の学術団体に認定された。毎年、全国各地で大会を開いて、情報や成果を共有している。

 大会初日は、地元から島絹推進協議会会長の南佑和さん、染織家の越間巽さん、大島紬作家の南修郎さんらを招いて特別講演を実施。小林会長は「新たなもの作りに生かしたい。大島紬との化学反応が楽しみだ」と期待を込めた。

 南佑和さんは「これからの奄美」と題し、大島紬の歴史などを説明。減産が続く大島紬を例に「一家に一着の時代は終わった。これからはどれだけ付加価値を付けるかが大事。野蚕もその一つ。伝統は守るものではなく挑戦していくものだ」と呼び掛けた。

 越間さんはフクギ染めや藍染めなど、島ならではの自然素材を次々とスライドで紹介。「自然の恵みを受けて育まれた美意識。まずはこのステータスを守りたい。次の世代の人が継ぎたくなる仕事に高めることもこれからの役割だ」と訴えた。

 一行は商品見学や総会なども開催。24日は龍郷町にある夢おりの郷を訪問し、「奄美黄金まゆ」などを見学する。