奄美市で南九州水産海洋研修会

スジアラをテーマに管理や資源確保で意見を出し合った第9回南九州水産海洋研修会

持続的なスジアラ資源考える
課題は温暖化 データ共有や対策で意見交換

 第9回南九州水産海洋研修会「スジアラ資源について考える」(水産海洋学会など主催)が24日、奄美市名瀬のアマホームPLAZAであった。専門家からは研究成果の発表があり、温暖化を要因に水揚げの減少が続くスジアラの危機的な状況が説明。参加者らは科学的データを共有し、持続的なスジアラの資源確保や管理に向けての課題や対策で意見を出し合った。

 南九州水産業の発展を目的に、2013年から九州各地で毎年開催。奄美群島での開催は初めて。行政や研究機関、漁業関係者など50人が参加した。

 ハタ科のスジアラは、島ではハージンと呼ばれる高級魚で、南西諸島海域では最も重要な水産資源の一つ。専門家ら7人が研究成果を報告し、今後の課題や対策について展望した。

 専門家らの報告によると、奄美海域のスジアラの漁獲量は06年からは5・5~7・4㌧で推移していたもの、18年からは減少傾向に転じ22年は3・8㌧まで低下した。温暖化が要因とみられ、水温が高かった年の5年後には水揚げが減少しているといったデータも示され、「温暖化の進行に伴い(将来的には)厳しい状況を迎えることが想定される」と危機感を募らせた。

 温暖化の影響は長崎県福江島の調査にも表れており、同近海ではスジアラの漁獲量が6年間で3・8倍に増えるなど生息域が北方へ拡大していることも分かった。一方、15年から漁獲体長制限など公的管理に乗り出した沖縄県では、緩やかに回復に向かっているとする報告もあった。

 討論では「体長、重量制限をするべき」「足並みをそろえるための統一基準の策定は必要」「鮮度保持など魚の高付加価値化についても議論すべき」といった意見が参加者から出された。

 水産機構技術研究所の奥山隼一さんは「放流の効果や(産卵や生息に関わる)地域間のつながりなど、まだ分からないことも多い。(今後も)データを精査しながら基盤となる調査を継続してほしい」と総括。進行役で県大島支庁林務水産課の宍道弘敏係長は「各機関が連携しながら、根本的な視点で見つめ直すことも真剣に考えていきたい」と呼び掛けた。