高齢者施設などで「種下ろし」

高齢者施設の前で行われた伝統行事「種下ろし」(26日、龍郷町瀬留)

龍郷町瀬留 200人以上が歌い踊る
銀座もとじツアー一行も参加

 集落内を歌い踊りながら練り歩き、翌年の豊作を祈る「種下ろし」が26日夜、龍郷町瀬留集落(恵島廣光区長)で4年ぶりに行われた。にぎやかな音に誘われた住民や、伝統行事を見るために訪れた東京からの観光ツアー客30人も加わり200人以上が踊り、深夜までにぎわった。

 種下ろしは、1年の締めくくりとして新築の家などを踊り清め、翌年の豊作や家の繁栄を祈る伝統行事。「かつては、昼も夜も三日三晩踊り回っていた」(恵島区長)という。

 同集落公民館広場でひと踊りし体を温めた一行は、サンシンやチヂン(太鼓)の音を響かせながら、2021年にオープンした複合型高齢者施設へ。施設前では、平均年齢90歳だという入所者ら約50人の出迎えを受けた。八月踊りを披露すると施設前は大きなにぎわいとなった。

 施設長の田中大樹さん(42)は「入所者は全員町内の人。若い頃はこの行事に関わってきた。高齢者が地域行事に関われる機会も久しぶり。刺激になったと思う」と歓迎した。

 同集落の種下ろしの見どころはハナ(寄付金)の披露の場面。踊り手の輪の中心で「○○様よりハナ1万両ちょうだいしました」と独特の節回しで披露されると、手をつないだ踊り手や女衆が大きな歓声を上げながら、輪の中心にせり寄っていった。

 施設内から見つめていた入所者の三島姫子さん(92)は「知り合いに久しぶりに会えた。よかった」と目を潤ませ、大吉喜美枝さん(94)は「若い頃を思い出した。懐かしかった。元気が出た」と笑顔を見せ、椅子に座ったまま手踊りを楽しんでいた。

 種下ろしは、3年前に建てられた別荘でも行われた。オーナーの田村純二さん(61)は「ぜひやってほしいと来てもらった。会社の繁栄、家の繁栄を願っている」と一行を歓迎していた。深夜には新築の個人宅も訪れた。

 東京で大島紬などを販売する「銀座もとじ」(泉二弘明会長=同町中勝出身)の顧客30人のツアー一行も参加した。上杉恵理子さん(43)は、「ホームの人と集落の人の交流がすてき(な文化)」と話し、涙を浮かべながら踊りの輪に加わった。

 泉二会長は「大島紬を買った人の要望で実現したツアー。奄美の文化、歴史、食、大自然を学ぶ」と話した。滞在中は、泥染めを学び、織工に会う機会も設けるという。27日は、奄美市のホテルサンデイズ奄美で大島紬をドレスコードにしたパーティーも行われ、78人が自慢の大島紬で参加した。