美容師から転身、ドボジョの世界へ

奄美市の道路舗装工事現場での注意事項などを書いた看板を前に白濱さん

工事現場に設けられた作業事務所の中で話す白濱さん

「いかつい男たちは優しいよ」
共栄開発工業㈱ 工事主任・白濱由理香さん

 瀬戸内町出身の共栄開発工業㈱工事主任の白濱由理香さん(40)は9月末、小型扇風機が内蔵されている作業着とヘルメットをかぶり、奄美市立小湊小の運動会前のグラウンド整備にボランティアで訪れていた。ヘルメットの下に見えた化粧ばっちりの笑顔に記者は驚いた。東京では「ドボジョ」は土木建設現場で増えてはいるが、まさか奄美で出会えるとは思わなかった。奄美市の道路の舗装工事現場で働く奄美のドボジョ・白濱さんを追っかけた。

 白濱さんは、瀬戸内町立古仁屋小、同古仁屋中から県立古仁屋高を卒業後、働きながら憧れていた鹿児島の美容師専門学校に進んだ。資格を取って、美容師として働いていたが、出産を機に退職。その後、興味のあった建設業へ事務職で転職した。

 幼い頃、通学時に道路の舗装工事の進み具合が面白くてのぞき込んでいた。楽しかった。好奇心旺盛なところは今も変わらない。事務職をしていたが、人手が足りない現場の様子や先輩たちの話を聞いて、ムクムクと興味が湧き、土木について学んだ。2級土木施工管理技士を目指し勉強したが、初めは「女の子だしやぁ、取れるかい?」という声もあった。「でも、やっぱり取りたい、もっと現場で仕事をしたい」。既に子どもは2人いたが、「いっぱい勉強した。先輩たちの熱心な指導のおかげ」で合格したものの、制服から作業着に着替えても男性のものしか当時はなかった。

 現在の会社に転社したのは4年前。総務事務で入社したが、やはり現場に携わる仕事がしたかった。社長へ志願した。一度目は保留、二度目に「よし!分かった!頑張れ!」と背中を押してくれた。総務をやめ、現場での仕事に向かった。建設ディレクターの資格を取り、1級土木施工管理技士も取得。この頃には作業服もレディース用ができていた。ドボジョの変わり目だった。

 仕事着は作業服。白濱さんは、当たり前のように授業参観に作業服で訪れた。今は小学6年生になる娘が2年生の頃、「作業服で来ないで。恥ずかしい」と言われた。ショックだった。その娘は5年生の時、「地域の人のため安全にしたり、暮らしを便利にしてくれるのが建設業の仕事だと分かって、作業着姿のお母さんを誇れるようになった」と作文を紹介してくれた。「やっててよかった」と、当時はあふれる涙はうれし涙だったと満面の笑み。

 男性と女性では現場での視点や視線が違う。母親としての経験も役に立つ。通学路などにかかるバリケードは大人用から少し低い子ども用を考えたり、注意書きも平仮名を使ったり工夫をする。「力仕事は得意ではないけど、いかつい男性たちがとても優しい。感謝しています。現場に関わらせてもらってありがたい」と話した。

 公共工事の施工計画書や工程表管理、工事事務全般を担う仕事に携わる白濱さん。最後に一言。「建設業の魅力をもっとPRせんばねぇ」と、奄美のドボジョの魅力満載で飛び切りの笑顔を見せた。