祭壇に献花し、亡くなった入所者の冥福を祈る参列者
奄美市名瀬の国立療養所「奄美和光園」(馬場まゆみ園長)の合同慰霊祭が2日、同園の講堂であった。遺族や同園の職員、入所者ら約60人が参列、黙とうと花を捧げ、昨年11月以降に亡くなった入所者6人を含む405柱の御霊(みたま)の冥福(めいふく)を祈った。
合同慰霊祭への園外からの参列や報道機関による取材は、新型コロナウイルス感染症拡大前だった2019年以来、4年ぶり。安田壮平市長も参列し、献花や納骨堂での焼香などを行った。
慰霊祭では馬場園長が「奄美和光園は今年度、開園80年を迎える。最大367人いた入所者も減少の一途をたどっている。今後も入所者一人一人の尊厳や人権を守り、豊かな自然環境に包まれた穏やかで心豊かな療養生活と安全で安心できる環境の提供に努めていきたい」などと述べた。
また、遺族代表は「地域によってはいまだに根強い偏見があると聞く。公共の場での差別はなくなりつつあるが、人の心のバリアがなくなったとは言い難い。心の壁がなくなることが、遺族の切なる思いであり、心からの願い。ハンセン病に限らず、障がい者も含め誰も何の隔たりもなく安心して過ごせる社会になることを願っている。そうした社会をつくっていくことが今ここにいるみんなの使命だ」と思いを語った。
式では、参列者が祭壇に献花。式後には園内の納骨堂に移動し、安置された物故者の位牌(いはい)に手を合わせた。
奄美和光園は1943年に開設。48~49年のピーク時には360人以上の入所者数を記録したが、2日現在の入所者は11人(男3人、女8人)と減少が続いている。入所者の高齢化も進んでおり、平均年齢は87・6歳で、最高齢は96歳となっている。
同園では今月30日に開園80周年の記念式典を開催する予定で、馬場園長は「今後も、入所者一人一人の思いに寄り添いながら日々の生活を支えていきたい。ハンセン病の差別、偏見の歴史を正しく伝えていくことも園の役目。地域の人たちに園に足を運んでもらい、入所者と触れ合いながら、ハンセン病について正しく理解してもらえるよう取り組んでいきたい」と話した。