復帰の歴史、教材用リーフレット作成

県大島教育事務所が作成した「奄美群島日本復帰に関する郷土素材リーフレット」(QRコードにより同事務所のホームページで閲覧できる)

 

小学校用

 

中・一般用

 

 

 

「つらいことあっても乗り越えて」
命懸けの密航ビデオでもメッセージ伝える

 

 

 県大島教育事務所は奄美群島の日本復帰に関する郷土素材リーフレットを小学校用と、中学校・一般用に分けて作成した。電子版を群島内の各小・中学校のほか、県教育委員会義務教育課を通して県内の学校にも配布されている。米軍統治下で行われた密航密貿易はビデオでも伝えており、命懸けの密航を通して子どもたちに「つらいことがあっても乗り越え、たくましく生きる」メッセージを届けている。

 同事務所指導課によると、授業モデルや教材を教員らが開発する「コアティーチャーネットワークプロジェクト」の一環として進められた。大和村教育委員会発行で晨原弘久教育長編集の『奄美群島日本復帰運動』『命がけの密航』を参考資料に、社会科の教員や行政関係者らで構成する同プロジェクト社会科部会が中心となり計4回にわたって協議を重ね、リーフレット内容やデザインを決めた。

 「(奄美群島が日本に復帰した)12月25日を忘れないでください」から始まるリーフレットは、70年前に何があったのか、先人の思いを受け継ぎ、これからの社会をつくっていくためにも歴史を知る大切さを問い掛けている。伝えている歴史は、▽日本が太平洋戦争で降伏したことで北緯30度から南の南西諸島(奄美と沖縄を含む)と小笠原諸島は日本本土と切り離され、米軍統治▽統治下での人々の暮らし(日本本土との自由な往来や連絡、送金などの禁止)▽協議会結成や署名運動、断食祈願などの復帰運動▽日本復帰までの出来事―で、こうした歴史をたどった先人の生き方から、どのようなことが学べるかも記載している。

 教材として読むリーフレットだけなく、見て聞いて学べるビデオも作成。密航のエピソードを物語的にまとめたもので、ナレーションは同事務所の職員が務めた。この中では、こんなメッセージを込めている。「わたしが密航した12歳と同じ世代の小学生中学生のみなさん、みなさんもつらいこと、苦しい悲しいことがあるかもしれませんね」「でも、こんな大変な時代を奄美の人々(子どもからお年寄りまで)は、乗り越え、たくましく生きて今の奄美を発展させてきたということを心に刻んで、みなさんも強い気持ちで生きていってほしいと願っています」

 作成に取り組んだ指導課の小峯三朗主任指導主事、阿久根崇指導主事は「地域の歴史を学ぶ社会科の授業だけでなく、命を考える道徳の授業でも役立つのではないか。子どもたちが生かしてほしい」と語った。

 復帰までの歴史を紹介するリーフレット作成と県内全域周知の意義について、地頭所恵県教育長は「(県内の)各学校で奄美の歴史や伝統文化に関する学習を行うことで、復帰運動に関わった方々の思いが受け継がれていくよう取り組む」(県議会6月定例会一般質問答弁)と述べている。