長田須磨シンポ

「奄美方言分類辞典」の意義について語る狩俣繁久・琉球大名誉教授(4日、大和村防災センター)

 

 

「シマクトゥバの喪失」に警鐘
狩俣琉大名誉教授が講演

 

 

 奄美の方言や大島紬の染織文化の研究に半生をささげた大和村出身の民俗学者・長田須磨(おさだすま)=1998年没=の功績を学ぶ第2回長田須磨シンポジウム(奄美文化継承プロジェクト主催)が4日、同村思勝の村防災センターであった。狩俣繁久・琉球大学名誉教授(68)が、長田の著書『奄美方言分類辞典』の現代的意義について講演し、「シマの生活や文化が見える」と評価した。オンライン参加を含む約60人が聴講した。

 長田は1902年、同村大和浜生まれ。48歳の時に民俗学者・柳田国男の著書『海南小記』に奄美に関する記述を見つけ、柳田が主宰する「女性民俗研究会」に参加、民俗研究の道に進んだ。50歳の頃からの半生を、大島紬の染織文化や奄美の方言の聞き取り調査などに費やした。方言辞典は長田の集大成ともいえる。

 登壇した狩俣名誉教授は、上下2巻の分厚い辞典を会場に回し、「6年間かけ60~70の集落を調査した。辞典は意味分野別の配列になっており、記述が豊かでシマの暮らしが見える。文化的な表記が多く、長田自身が経験した生活のあらゆる記憶を書いている」と評価した。

 一方、シマクトゥバ(沖縄を含む方言)の喪失は、言語によって理解され、継承されてきた文化が形骸化してしまうと警鐘を鳴らし、「親世代がシマユムタ(奄美の方言)を母語としなくなると、数世代先には言語の消滅が待っている」と断言した。

 その上で、継承されるべき「言語権」を確立するために、方言を話せないことを前提に、10冊の方言辞書を収載したデジタル版『大琉球語辞典』を制作中と話した。長田自身が、自著の記述に基づいて方言を話す声を聴くこともできるという。

 長田のおいで同プロジェクト代表の見目(けんもく)正克・奈良女子大学名誉教授(79)も登壇、『南島雑話』を書いた名越佐源太と長田の交流を紹介した。同プロジェクトとして奄美文化継承館を造り、海外への文化発信の拠点とする構想も明らかにした。

 同村思勝の和泉和香さん(46)は「八月踊りを教えるなど方言を継承していく立場になった。雲をつかむような状態だったが、辞書の存在を知り感謝している。生の声が聞けるうちは、担い手として頑張っていく」と語った。