「第46代横綱朝潮太郎記念館」落成式 徳之島町井之川

「第46代横綱朝潮太郎記念館(井之川観光拠点施設)」の落成を祝い、奉納「夏目踊りも」=4日、徳之島町井之川

 

 

元横綱朝潮太郎の大銀杏断髪時の「まげ」もふるさとに贈った米川啓子夫人(右)

 

 

偉大な功績伝えよう
啓子夫人「まげ」も寄贈

 

 【徳之島】大相撲の第46代横綱朝潮太郎記念館(井之川観光拠点施設)の落成式が4日午後、同元横綱で高砂部屋親方(本名・米川文敏)の出身地、徳之島町井之川の公民館敷地であった。町が2020年度事業で建設、コロナ禍で延期されてきたが、夫人の米川啓子さん(78)=東京都=らを迎えて実現。保存展示資料に新たに〝力士の魂〟大銀杏(おおいちょう)断髪時のまげも寄贈した。

 第46代横綱朝潮太郎(1929年11月13日―88年10月23日没)は現役時代は身長189㌢、体重145㌔。天性の巨体、男性的な風貌、運動神経のよさなど「百年に一度」の大器と高砂部屋(横綱前田山)に見出され48年10月、米軍統治下の奄美群島(徳之島)から入門。本場所で5回優勝するなど大活躍し59年、30歳で横綱に。高砂部屋親方就任後は、初の外国人力士の小錦、高見山をはじめ朝潮(元大関)、富士桜など名力士を育てた。ふるさと井之川集落には合宿所も設置し、若手力士らを送り込み交流も進めた。

 井之川公民館敷地には95年7月、全国募金で「徳之島が生んだ快男児」の活躍と貢献をたたえる雄姿の全身像を建立。今回の記念館も地元関係者が観光拠点視察活用と併せて要望。町が地域振興事業(約4891万円)を活用し、鉄筋コンクリート平屋(延べ床面積約82平方㍍)の記念館を銅像横に建設していた。

 記念館には、啓子夫人が無料展示を条件に町に寄贈していた化粧まわし、初優勝(56年春場所)時や太刀持ち横綱大鵬・露払い横綱柏戸を従えた引退土俵入りの写真など多数の寄贈資料を収蔵。暫定的に集落管理で一般に開放、落成式が2年遅れる形に。

 式には啓子夫人をはじめ長男米川一茂さん(62)、長女斎藤一江さん(55)、元親方の実弟米川忠夫さん(87)ら親族を交え関係者約80人が出席した。

 高岡秀規町長はあいさつで「朝潮関は(祖国分離下に)密航の形で島を離れ〝兵庫県出身〟で出ていた。復帰運動にも参加し、(復帰翌年の)54年2月から〝鹿児島県出身〟を名乗って土俵に上がったと聞いている」。その上で「横綱は総理大臣になるより難しい。密航の苦労の末に一代で築いたこの成功を伝えなければならない」とあらためてアピールした。

 祝辞(行沢弘栄町議会議長、八木修治県徳之島事務所長)に続き、啓子夫人ら親族や住民代表(保和廣区長)らも交えテープカット。啓子夫人は今回新たにガラスケースに収めた「まげ」と親方が愛用した象牙の箸、着流しなども追加で持参。「まげは手直しで少し小さくなっていますが、主人の髪の毛に間違いありません。みなさまに見ていただくことを大変うれしく思います」とお礼を述べた。

 この後、住民たちが情熱的な「井之川夏目踊り」を奉納。引き続き同公民館で祝賀会があった。