アサギマダラ秋の渡り

奄美大島に飛来してきたアサギマダラ。今秋の移動は「1週間から10日遅れ」となっている(8日、龍郷町長雲峠)
龍郷小児童によるマーキング活動

南下1週間~10日遅れ
龍郷小マーキング活動、長野から約1320㌔の移動確認

日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラは秋の渡りにより奄美大島や喜界島でも飛来が観察されているが、専門家によると今秋の南下は気温など気象条件の影響で「1週間から10日遅れ」となっている。8日にはヤマヒヨドリバナなど吸蜜植物が自生する龍郷町の長雲峠で、近くの龍郷小学校(住友智光校長、児童数22人)によるマーキング(翅(はね)への標識)活動が行われ、再捕獲により長野県から約1320㌔の移動が確認された。

アサギマダラ研究家として知られ、今月上旬、喜界島を訪れマーキングなど調査を行った栗田昌裕さん=群馬パース大学学長、医学博士=によると、今秋の移動の傾向としては▽東北地方など北日本で少なく、中部以南では多いなどムラが生じている▽南下の遅れで、本州で停滞しているのも見られ、気温の状況から奄美や沖縄など南西諸島や台湾まで移動せず本州で卵を産む可能性がある▽暖冬により南西諸島では11月~12月も飛来を観察でき、長く楽しめる見通し―などがある。

アサギマダラは「温度が高すぎても低すぎても飛べなくなる生き物」で場所によって異なるが、22~25度前後を好むとされている。栗田さんは「11月上旬(3~5日)、喜界島はまだ飛来数が少なかったが、今週に入り増えつつあるようだ。例年よりも遅れている」と語り、11月に入っても全国的に高温が続くなど「温暖化がもたらす気候変動により今年は転換点になるかもしれない。これまでの南下の移動(本州から南西諸島などへ)が崩れることが考えられる」と指摘する。

奄美に自生する吸蜜植物のうちヤマヒヨドリバナやヌマダイコンが草刈りされずに残り、群生地もある長雲峠では本州などから移動してきたアサギマダラが長旅を癒やすように花の蜜を吸う様子が見られる。マーキング活動を行ったのは龍郷小の1、2年生5人。学校に常に準備されている捕虫網を手に、児童は峠を登りながらアサギマダラを捕獲しマーキング後には放した。この日のマーキング数は21匹で、このうちの1匹に長野県からの移動を示すマークがあった。翅に記入された情報は「8月27日」の日付と場所を示す「ナガノタカ山」、マーク者を示すとみられる「NHP126」の記入も。

長野県の北東部に位置する同県高山村でマーキングされたとみられ、このアサギマダラを再捕獲したのは丸野詩(うた)君(7)。約2か月半かけ長野県から龍郷町までの長距離移動が分かると、丸野君は驚きの表情を見せながら再捕獲できたことに笑顔だった。1、2年生担任の林博子教諭は「子どもたちはマーキング活動を通し、海を越えて遠くから飛んできたアサギマダラを『頑張ったね』『よくここまで飛んできたね』と優しい気持ちで迎え、(気象現象を読むように適温を求めて長距離移動する)アサギマダラから学び、目標を持って取り組む子に育ってほしい」と語った。