23年奄美大島ウミガメ調査

昨年、奄美大島の海岸で産卵したアカウミガメ。産卵数の減少が懸念されている(奄美海洋生物研究会提供)

過去12年間で最少、アカウミガメの減少傾向続く
産卵260回、前年の6割ほどに

奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は8日、「2023年奄美大島におけるウミガメ上陸・産卵調査」と「リュウキュウイノシシによるウミガメ卵採食状況調査」の結果を公表した。同年4月~9月の産卵回数は260回(アカウミガメ46回、アオウミガメ157回、不明57回)で、前年比65・2%の減少。2012年の調査開始以降、12年間で最少となった。上陸回数は360回(アカ50回、アオ211回、不明99回)だった。

調査は、ウミガメの産卵モニタリングや奄美市ウミガメ保護監視委員業務の一環として同研究会が実施した調査データと奄美野生生物保護センター、県、島内5市町村などが行ったデータを集計、分析したもの。

アカウミガメの産卵は2013年の663回をピークに減少傾向が続いており、これまで最少だった21年の59回を13回下回り、過去最少となった。近年、減小が続いている要因として、摂餌海域である東シナ海での混獲による生息数の減少や餌資源の減少による産卵頻度の低下などの影響が考えられるものの、現時点では明確な因果関係は認められていない。

同研究会は数年おきに産卵するウミガメの生態などから、同研究会では「生息数の増減については中長期的な分析が必要。継続した調査が求められる」としている。

アオウミガメも前年比57・3%と大幅に減少、15年の133回に次いで2番目に少なかった。過去12年間の産卵回数は、増減を繰り返しつつも、安定的に推移。2016年以降は、アカウミガメの産卵回数減少により、アオウミガメが奄美大島の産卵優占種となっている。

アオウミガメについては、同島沿岸海域に周年生息する亜成体(未熟な成体)が増加しているが、産卵数の増加との関連は明確でないことから、アカウミガメ同様、「今後の産卵回数の推移を注視する必要がある」としている。

同島では近年、沿岸域などで海草を食べるウミガメをシュノーケリングで観察するツアーなどが盛んに行われるなど、観光資源として注目、活用されている。一方で、死んだウミガメが漂着するケースも増えており、同研究会では「今後はエサ資源量を含めた生息数のモニタリングの拡充が求められる」としている。

リュウキュウイノシシによる卵の採食については、採食の被害に遭った産卵巣数が昨年の50巣から今年は40巣に減少したものの、産卵数が大幅に減ったため、被食率は昨年の12・5%から15・4%に増加した。12年から12年間の平均被食率は22・6%となっており、2割ほどの卵がイノシシに食べられている。

産卵数の減少が続く浜では、採食の発生がなくなる傾向が見られるが、採食があった浜の多くで次の年も採食があり、採食行動の恒常化がみられるという。