日本復帰70周年記企画展始まる

テープカットで企画展の開催を喜ぶ安田市長(中央)ら

署名簿などが展示された日本復帰70周年記念企画展

署名簿や断食祈願のぼりなど 奄美博物館

 奄美群島日本復帰70周年記念企画展が10日、奄美市名瀬の市立奄美博物館で始まった。「朝はあけたり 1953~『語り継ぐ』次世代へ~」をテーマに、来年1月7日まで開催される。初日は、同博物館でオープニングセレモニーが行われ、安田壮平市長らがテープカットをして、企画展の開催を祝った。

 企画展は戦前から戦後、米軍政下(アメリカ世)、復帰運動の展開とその後の奄美の様子について、同博物館が所蔵する資料を中心に紹介。戦前から戦中にかけ、瀬戸内町を中心に軍事施設の建設が行われた様子や度重なる空襲で市街地が消失、多くの犠牲者がでた戦争の悲惨な歴史などにも触れている。戦後も本土から分離され、米軍政下となった奄美群島で使用された紙幣「B円」(軍票)や米軍政府発行のパスポートなども展示されている。

 復帰運動関連では、1951(昭和26)年に始まった復帰請願の署名活動で集まった13万9348人の署名簿の奄美群島の各町村ごとの原本を展示。コピーも展示されており、署名簿の内容を確認することもできる。

 このほか、同年7月に名瀬小学校校庭で行われた名瀬市民総決起大会などで使用された円形テーブル、奄美大島日本復帰協議会の議長を務め、復帰運動の父と言われる泉芳朗が同年8月に奄美市名瀬の高千穂神社で行った「断食祈願」をした際に掲げられた、のぼり旗など復帰運動を伝える貴重な資料が数多く展示されている。

 セレモニー後、出席者らは同館3階企画展示室に移動し、同館の喜友名正弥学芸員から展示内容などについて説明を受けた。同市住用町市から訪れた森紘道さん(75)は「復帰当時4歳だった。資料を通し、復帰運動の歴史を知るとともに、復帰を実現した先人の思いを未来につないでいくことの大切さを実感した。なぜ、復帰できたのか、今を生きる私たち一人一人が考える必要があると感じた」と話した。

 展示内容などを企画した喜友名学芸員は「復帰70周年の節目の年に、日本復帰を願い活動した当時の島民の思いに触れ、現在に至る島の復興と発展を成し遂げた先人たちに思いをはせる機会にしたい。多くの人に来場してほしい」と呼び掛けている。

 企画展は来年1月7日まで、午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)に同館3階企画展示室である。見学には入館料(一般310円、大学生・高校生150円、小学生100円)が必要だが、市内の小中学校、高校に通う児童・生徒は無料。12月25日は「奄美群島日本復帰記念の日」に伴い、すべての入館者が無料となる。

 企画展の問い合わせは奄美博物館(電話0997・54・1210)へ。