徳之島空港で離着陸訓練を繰り広げた空自のF15戦闘機=13日午後3時すぎ、天城町
【徳之島】奄美群島を含む全国で展開中の陸海空「自衛隊統合演習」で13日午後、徳之島空港(天城町)では、航空自衛隊南西航空方面隊・第9航空団(那覇基地)のF15戦闘機4機が「タッチ・アンド・ゴー」訓練を実施。自衛隊基地が攻撃などで使用不能になった場合を想定した同空港初の訓練。島民など100人以上が見物に訪れ、空気を切り裂き轟音を残して消えた戦闘機を複雑な表情で追った。
空自戦闘機による同離着陸訓練は同日、大分県・大分空港と鹿児島県・徳之島空港であった。攻撃されるなどして自衛隊基地の滑走路が使えないことを想定。台湾や沖縄県尖閣諸島を巡る有事を強く意識した訓練とみられる。
徳之島空港には同日午後3時20分ごろF15戦闘機が南の空から姿を現した。地元徳之島(伊仙町阿三)出身の小牧努1等空尉(37)が操縦する機が先頭を切って滑走路に進入して滑走後、すかさずパワー全開で急上昇。数十秒間隔で4機が繰り返した。時間帯的に民間航空便への影響はなかったという。
那覇基地のF15戦闘機は、南西域の領空を侵犯する恐れのある外国籍の航空機に退去を警告したり、場合によっては飛行場に強制着陸させるなど対領空侵犯措置(スクランブル)が主任務。平日に1~3回程度飛行訓練をしているという。徳之島には「戦艦大和を旗艦とする特攻艦隊戦没将士慰霊祭」(伊仙町犬田布岬)で編隊での慰霊飛行に協力しているが、同島の民間空港での離着陸訓練は初めて。
見物客で埋まった空港ターミナルビル2階の展望デッキには、訓練反対運動のノボリを掲げたグループの姿も。「奄美の自然と平和を守る会」会員の一人・富純一さん(70)=伊仙町=は「民間空港の関係者に迷惑を掛けていると思う。なぜこの空港なのか理解ができない。今回は3町の体育館などに隊員約9百人が滞在中という。総合訓練はまさに戦争の準備としか思えない。ウクライナなどの例では、まず犠牲になるのは一般住民だ」などと批判。
一方、自衛隊関連の誘致運動を町議会一体で進めている天城町の森田弘光町長は「思ったよりは低いエンジン音と思った。天城町には空港があるため空自が中心かと。有事は絶対にあってはならず、起きないようにするのも国や政治の役目。それに備えた訓練は必要」。地震や風水害など「災害救援面での安心感もある。誘致は今後も進めていく」と話した。
同戦闘機訓練は引き続き15日も予定。奄美空港でも17、18日に予定しているという。