松尾さん(大島支庁)農林水産大臣賞

出席者を前に発表する松尾さん

農林水産大臣賞を手に日本一の笑顔を見せる松尾さん

全国大会でタンカン栽培テーマに発表
鹿県3回目、支庁から初の日本一

 【東京】県大島支庁農政普及課技術主幹兼技術普及係長の松尾至身(てつみ)さん(55)は15日、中央区京橋で開催された第11回農業普及活動高度化全国研究大会に鹿児島県代表として出場した。「奄美大島の多様な人材を生かしたタンカン産地のアップデート」をテーマに発表し、最高賞の農林水産大臣賞に輝いた。日本一は鹿児島県勢では3回目、大島支庁からは初の快挙となった。

 大会は、農業者の減少や高齢化等の問題に取り組む普及指導活動手法を共有することなどが目的。全国農業改良普及職員協議会などが主催し「普及が挑む!イノベーション、共に創ろう未来の農業」をスローガンに、AP東京八重洲で行われた。47都道府県の農業普及指導員の48点(北海道は2点)から、厳選な審査をくぐり抜けた9点が全国大会での発表事例となった。鹿児島県からの全国大会出場は7年ぶり4回目。約200人を前に晴れ舞台に登壇した松尾さんは、落ち着いた口調で語り始めた。

 タンカンは、山林が多い奄美の地域性に適しているとしながらも「将来の担い手と期待される8割以上が新規就労者で、中には女性も多い」と実態を示しながら、新規就農者や零細農家等を対象に「『たんかん塾』を開催、専門用語を排除した奄美タンカンガイドブックを作ることで初心者の理解につなげていった」と就労しやすい環境づくりに徹したことを説明。生産基盤の強化に体系的な育成プログラムを基に実行を重ねた。

 「そうした結果、産地全体の柑橘(かんきつ)の生産性向上への意識が大きく変化し、懐疑的に見ていた大規模農家の中にも理解者が現れ、現在28戸が新たな栽培方式を導入するに至った」という。一方コロナ禍では、ミーティングアプリなどを活用して士気高揚に取り組んでいったと説明。目標とした5年間で面積・生産性10%アップ、7年間で15人の人材確保が達成できたと報告し、「人と人とをつないで問題を提起して、人の心を動かすことに取り組んできた」と締めくくった。

 「地域の特性を生かし、小規模経営の中でも、発展の道、明るい展望を示してくれた」と審査員の心を動かし、日本一(農林水産大臣賞)となった松尾さん。周りからも祝福され、ひときわ大きな拍手にも「皆さんの協力があってこそで、素直に感謝しています」と快挙にも控えめだった。奄美の生産者に対しては「まだまだ伸びしろもあり、まだまだ高みに行ける地域。共に頑張って、共に学んでいきたい」と笑顔でエールを送っていた。

 松尾さんは2016年から3年間、大島支庁瀬戸内事務所に在籍。2年間の農業大学校勤務を経て、21年から大島支庁農政普及課に勤務。普及活動では果樹農業の技術指導を担当している。