「貝塚人とクロウサギ」講演会

「下原洞穴遺跡」り国指定目指し町内中学生(円内)対象の講演会・パネルディスカッション=16日、天城町防災センター

天城町の中学生対象
世界的な奇跡の島 遺跡国指定化へ周知

【徳之島】天城町内の全中学生対象の文化財講演会・パネルディスカッション「貝塚人とクロウサギ」(町教育員会主催)が16日午後、町防災センターであった。同町西阿木名の「下原(したばる)洞穴遺跡」の奄美群島最古(約1万7千年前)の炉跡からアマミノクロウサギの骨が出土。乱獲・絶滅させずに1万年以上共生した「奇跡の島」の背景を解説し、持続可能な島づくりを説いた。

「下原遺跡」は、琉球列島の先史時代「空白の1万年間を埋める発見」と注目を集めている極めて重要な遺跡。奄美最古の炉跡、火で黒化し調理・食用にしたと見られるクロウサギの骨も検出。日本最古級の「隆起線文土器」(約1万3千年前)や「磨製石鏃(せきぞく)」など多数の遺物が出土。町教委は2024年度の国史跡指定申請を目指す。価値などの周知に今年2月に初のシンポジウム、7月には鹿児島市(鹿児島大構内)でも開いた。

中学生対象の講演会も同周知の一環で、町内3校の生徒ら約150人に一般聴講者ら含め約200人が来場した。

講演会では、山田文雄氏(沖縄大客員教授・地域研究所特別研究員)が「奇跡?生き残ったアマミノクロウサギ」、高宮広土氏(鹿児島大国際島嶼教育研究センター教授)が「奇跡の島々と貝塚人」を演題にそれぞれ講演した。

「ウサギ博士」でも知られる山田氏は約40年間の調査結果の一端も交えもクロウサギの減少原因(外来捕食者のネコやイヌ、交通事故)を憂慮。保護に向けては「絶滅しやすいクロウサギの特徴を知る。必要な対策を検討、実施して共生を図る」。そのためにも①安心して住める森を大切に②捕食者(ネコ・イヌ)は放さない③朝夕・夜間の車の通行には十分気をつける。奇跡の島の維持に「生態系を基軸にした社会の実現」も訴えた。

高宮氏は、島という自然資源の限られた環境の中で、自然を悪化させることなく、人と自然とのバランスを取ってきたことは世界的にみても特筆すべきこと。1万年以前からヒトと自然が調和し、ヒトによる絶滅動物もなく人間集団の入植後環境の影響が最小だったことなど「世界的にも奇跡の島」と強調した。

パネルディスカッションには、同会場で写真展『わが家の客はクロウサギ』も並行した同町当部在住ののせたかこさん(森と藝術楽校主宰)と、生徒代表の﨑村倫大朗さん(西阿木名中2年生)も登壇。のせさんは「昔と私たちの今の生活の仕方は変わってきている。このまま〝奇跡の島〟でいるには、私たちの危機感とか生活しだいと思う」。福岡県出身の﨑村さんは、幼少期から生き物が好きで、多様性に富んだ個性的な生物たちが暮す徳之島を山海留学先に選択、大自然を満喫していることなども紹介した。

【貝塚人(時代)】本土歴史時代の縄文草創期~古墳弥生相当期。