徳之島町史刊行記念シンポジウム(講演会)=25日、同町生涯学習センター
160年前の「徳之島全図」(コピー)の展示も
【徳之島】奄美群島日本復帰70周年記念・徳之島町史刊行記念シンポジウム(同町教育委員会主催)が25日、「ここまでわかった、島の自然と島っちゅの歴史」をテーマに同町生涯学習センターであった。50年ぶり刊行の「同町史」の中から、最新の研究成果などポイントを同編纂室の各専門部会長らが講演し、対談形式でも披露。町内外の約180人が聴講した。
同町は2018年度から進めた町誌編纂事業「徳之島町史」全7巻を締め括る「同町史・通史編Ⅰ―先史・古代・中世・近世」と「同・通史編―近現代」の2巻についてもこのほど刊行。総事業費約5500万円をかけた同編纂事業を終えた。シンポは同刊行を記念して同島の自然や歴史に関する最新の研究成果を紹介するのが目的という。
開会あいさつで高岡秀規町長は「先生方(編纂委員)が歴史を再度調べていただき、このような素晴らしい町史ができた」と感謝。教育の振興や町史活用を通じ「子どもたちが自分たちの歴史を知ることで古里を愛し、いつか島に帰る人間力と心も生まれると思う」などと期待を寄せた。
第1部「むんがたり」(講演)には▽服部正策・奄美大島自然保護協議会顧問が「徳之島のハブは奄美大島のハブより強い?―自然が語る徳之島の個性」▽皆村武一・鹿児島大名誉教授が「復帰運動の『のろし』―徳之島の人びとと復帰運動」▽深澤秋人・沖縄国際大教授が「『徳之島全図』をよみとく~160年前の徳之島町の村のすがた」▽町健次郎・瀬戸内町立図書館・郷土館学芸員が「シマを『あるく・みる・きく』~徳之島町のシマ遺産」▽高宮広土・鹿児島大国際島嶼研究センター長が「大昔の島っちゅは何を食べていたのか~獲る・採る・穫る」を演題に5氏が登壇した。
深澤氏は160年前の藩政期に描かれた「徳之島全図」(県立奄美図書館所蔵)を基に、「仲為日記」(島役人琉仲為の記録)や「徳之島前録帳」(徳之島面縄院家蔵前録帳)など歴史文献なども読み重ねて調査。当時の村々の姿や特徴、尾根の描かれ方、詰役人が山・川・海辺の測量を指示。基本情報は追加して近世に遡ったこと。町域は「東間切の亀津?(あつかい)・井之川?、西目間切の岡前?」。黒糖積み出し港の位置状況など、全図に文献史料を重ねた新知見も発表した。
第2部「さらに深掘り!」対談では、①「あるく・みる・きく・よむ―徳之島町のシマジマのすがた」②「『学士村』の伝統と未来」③「ハブとアマミノクロウサギとヒト~クロウサギが生き残った『軌跡』」をテーマに披露した。
会場では編纂員会が収集した記録写真など資料展示も並行した。