会場の雰囲気を一変させた琉球舞踊・前川美智子さんの演舞
奄美側はアーティストの共演。(左から)平田輝さん、里朋樹さん、平田まりなさん
2階席までぎっしり埋まった会場
自然資源の活用の可能性について語る花城良廣・沖縄美ら海財団理事長
奄美沖縄県人会(前川順英会長)主催の「ハイサイ!第3回琉球フェスタ」が26日、奄美市名瀬のアマホームPLAZAの全フロアを貸し切って行われた。奄美群島日本復帰70周年・沖縄日本復帰50周年(2022年)を記念した節目のイベント。両地区の交流をテーマにした講演やトークセッションがあり、ステージでは、琉球舞踊と奄美のシマ唄が共演した。会場は2階席を含む354席が全て埋まり超満員となった。
亜熱帯植物の調査研究や国営沖縄記念公園の管理・運営を行っている一般財団法人・沖縄美ら海財団の花城良廣理事長が、「島の資源~資源の共有と交流~」と題し基調講演。固有植物を〝資源植物〟と位置づけ、独自の商品づくりへの取り組みを紹介した。
「沖縄と奄美は、東南アジア植物区圏としてひとくくりに考えられる」と、沖縄での取り組みが奄美でも有効と解説。沖縄で、自生するフクギの成分を使った保湿化粧品の商品化に成功、高い販売実績があると紹介。龍郷町に群生するイトバショウなどにもこうした可能性が秘められていると話した。
また、日本では絶滅したと考えられていた山野草「リュウキュウベンケイ」を、高知県の牧野(富太郎)植物園で発見、原種から交配を続け〝水なしで31日間持つ〟花を作った事例も紹介した。「離島の弱点となる流通面の心配をせず出荷できる商品」になったという。
奄美大島に自生するダイサギソウも、沖縄県内の研究施設で行った遺伝子操作で、1・5倍の大きさの花をつける園芸種を開発したと紹介。「野生種を改良、観賞できる園芸種を開発すれば、自生地のものはそのまま残すことができる」と話した。
こうした試みについて、「市場で自由に入手できるようになれば、自生地の野生種や原種を守ることにつながる」と研究開発の意義を語った。
自然景観資源活用の観点から、サンゴ石灰岩の上に植物が生い茂る理由について、有効微生物の存在があるとし、コンクリートの上に植物を植える実験なども紹介された。
講演後は、前川会長らも加わったトークセッションもあった。
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ステージは、沖縄3世の兄弟デュオ・上原ブラザーズバンドで開幕。奄美看護福祉専門学校エイサー隊は、客席にチンスコー(沖縄のお菓子)を配り、観客を巻き込んで踊った。
国指定重要無形文化財「琉球舞踊」伝承保持者・前川美智子さんが登場すると、会場の空気が一変。能のように静かにすり足で動くさまを息を飲んで見守った。
奄美側から、シンガーソングライター・平田輝(あきら)さんが登場すると、「お帰り~」と大きな歓声があがった。姪の平田まりなさんと「HALKANA―ハルカナ―」をデュエットした。
今年度の奄美民謡大賞を受賞した里朋樹さんは、阪神タイガースの虎模様のサンシンを手に登場。軽妙なトークで会場を笑わせ、「豊年節」などを歌い上げた。
息子が沖縄の専門学校を出て就職・結婚、現在は沖縄市に住んでいるという三井智子さん(41)は「素晴らしいステージ。感動した。花城さんの講演も驚きの連続だった」「息子にはLINEで報告する」と興奮を抑えられない様子で話した。
前川会長は「予想以上の人出があり驚いた。出演者が交流ムードを高めてくれ感謝している。今後は沖縄奄美会との交流も図りたい」と、2年後の開催を見据えていた。