鹿大地域シンポ「沖永良部の近現代」

島の現在と未来について意見を交わす座談会の参加者ら(9日、知名町あしびの郷ちな)

 

 

島の現在と未来語り合う
島の若者や移住者らが座談会

 

 【沖永良部】鹿児島大学法文学部付属「鹿児島の近現代」教育センターによる奄美群島日本復帰70周年記念地域シンポジウム「沖永良部の近現代―沖永良部の現在―」が9日、知名町フローラル館であった。各種座談会が開かれ、地域活性化に取り組む若者や移住者、島内在住の外国人らが登壇し、沖永良部の現在と未来を語り合った。

 同センターは、地域資源を活用した教育研究活動の推進を目的に昨年10月設立。沖永良部での地域シンポジウムは2回目。住民ら約30人が参加した。

 シンポジウムは3部構成。第1部は「未来の沖永良部に向けて」をテーマに、和泊、知名両町で進めている脱炭素事業や若者の取り組みを紹介。起業事例として、(株)novelio代表で鹿児島大学4年生の宮田陸さんが島バナナを使ったビジネスモデルを説明した。

 第2部は「沖永良部に暮らすひとの現在」と題して▽島で働くワカモノの現在▽島外からやってきた人の現在▽国外からやってきた人の現在―の3つのセッションで座談会を開いた。登壇したえらぶ島づくり事業協同組合の職員で移住者の女性は「島外者は、夢をかなえたいなど大きなビジョンを持っている人が多いので、作業をこなしてもらうという環境だとやる気が下がってしまう。気持ちのコントロールが課題」と述べた。島で働く中国人の男性は、島での生活を送る上で「お互いがもっとコミュニケーションを取れれば、島のことをもっと好きになる」と話した。

 第3部は特別座談会「沖永良部と文学」を開催。沖永良部出身の作家・一色次郎について同センターの鈴木優作特任助教と沖永良部の歴史や経済に詳しい前利潔さんが対談。一色の生涯や作品を紹介した前利さんは、一色の作品の魅力について「島への葛藤、両親との葛藤がある」と述べ、代表作である『青幻記』のほかにお薦めの本として「記録文学として『空襲記』などを残している。記録にこだわっていた」と話した。鈴木特任助教は「記録という側面でも活躍した作家であるというのは、もう少し知られてもいいのではないか」と述べた。