奄美第九高らかに

歓喜の歌に力を合わせる170人の団員たち


5年ぶりの開催に久保陽子さんらも花を添えた

5年ぶり、170人が「歓喜」
1400人、全4楽章に喝采
久保さんやソリストら花添える

 ベートーベンの交響曲第9番を演奏する島民らでつくるオーケストラと合唱団によるコンサート「奄美第九2023」(同実行委員会主催)が10日、奄美市名瀬の川商ホールで開かれた。コロナ禍を経て5年ぶりに約170人が集結。東京交響楽団・阪本正彦さんの指揮で「歓喜の歌」を高らかに歌い上げた。

 奄美群島日本復帰60周年の2013年に始まり今年で5回目。島の管弦楽団・奄美オーケストラ約70人と岡山和子さんが指導する同合唱団約100人が出演。9~88歳の約170人が6月から練習を重ねてきた。

 コンサートは2部構成。第一部は、奄美大島出身の世界的ヴァイオリニスト・久保陽子さんが演奏。第二部では、与論町出身のバリトン・町英和さん、奄美二世のソプラノ・木下美穂子さんら計4人のソリストらも迎え、初の全4楽章を披露した。

 1400人の観客が詰め掛けたコンサートは、久保さんによるバッハの曲「シャコンヌ」で幕開け。10歳の時、東京・日比谷公会堂で行われた日本復帰式典で披露した「ツィゴイネルワイゼン」では、奄美オーケストラと共演。「歓喜」を前に花を添えた。

 第二部は、初の第1楽章が演奏。第2、3楽章と続く中、会場の熱気は最高潮に。第4楽章「歓喜の歌」では、合唱団やソリストが歌う美しく迫力に満ちた声と演奏を調和させ、観客らが喝采した。

 アンコールの童謡「ふるさと」を終え、タクトを置いた阪本さんは「10年かけてやっとここまでたどり着けた。みんなが素晴らしい音をくれた」と感謝。観客からは「強弱のある演奏が最高」「涙が出そうになった」といった声も上がった。

 今年合唱団に加入した諸鈍小4年で最年少の吉川海馳さん(9)は「(歓喜の歌の)名場面の部分が好きでうまくできた。緊張したけど声も出せた」と喜び、保宜夫実行委員長は「全ての人の協力があってこそ、ここまでできた。(日本復帰70周年や第九10年目など)喜びが多い中で、本当の喜びを表現できてよかった」と笑顔で話していた。