軍政下、学友の「記憶」文集に

常夏会同窓生による文集『蘇鉄の花咲きくれば…』の完成を報告する和さん(左)と宮山さん

文集には当時の貴重な写真や図版も豊富に載せた

戦後から日本復帰まで
常夏会上梓「子どもに聞かせ伝えて」

 戦時・終戦の1945(昭和20)年に国民学校(小学校)に入学し、中学、高校と奄美大島で過ごした同窓生らでつくる「常夏会」はこのほど、会員文集『蘇鉄(そてつ)の花咲きくれば…』を上梓した。米軍政下時代に学び舎を共にした学友が、当時の記憶を頼りに体験や思い出を綴り寄稿。編集員の和(にぎ)秀雄さん(84)と宮山紘一さん(84)の2人は「(完成に)ほっとしている。戦後の資料としても貴重な記録になった。子どもたちに聞かせ伝えてほしい」と思いを込める。

 常夏会は、米軍政下時に奄美大島内の小中高校に通い、奄美群島が日本に復帰した53年に中学校を巣立った世代。81年には400人を超える会員が所属していた。

 きっかけは、コロナ禍で同窓会が途絶えていた昨年11月、2人が冊子の企画を口にしたことで意気投合。当初は同窓会に代わる寄せ書きのつもりだったが、奄美市が募る70周年助成事業の採択を受けて方針を変更。「人生に痕跡を残す文集を」と本格的に仕立てた。

 会員らは、子どもながらに激動の時代を生き抜いた世代で、投稿条件は「終戦から日本復帰前後の記憶」に限った。期限を伸ばした成果もあってか全国の学友62人がそれぞれに残る「自分史」を寄稿。編集を経て、1年越しに日の目をみた。

 文集では、復帰運動の様子や戦渦での苦難、混沌とした暮らしの他、日常生活や学校風景など、思い思いに綴られた。文中では、写真や新聞記事の切り抜きの他、巻頭では通知表やB円といった象徴的な図版も多数掲載した。

 和さんは「涙もろくなったせいかすべてが感情に訴えて来る。親友や仲間の思い出が詰まっており、語り出すと尽きない。足跡を残せることに感謝したい」。宮山さんは「子ども目線ながらの体験を生の声で伝えることに努めた。昔の記憶なので曖昧さはあるが、それぞれの個性が際立った立派なものができた」と笑顔で話した。

 冊子はB5で、全213㌻。会員の他、今後は地元行政や学校、公共施設などに配布していく予定だという。