鹿大島嶼研リニューアル内覧会

先史の奄美・沖縄を発掘調査の結果から語る高宮広土・国際島嶼教育研究センター長

「リュウキュウイノシシを食肉資源に」
各分野の研究者が講演

 奄美市名瀬港町の鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室は16日、サテライト教室や実験室を統合して改修した同分室の内覧会と、同大学の研究者5人による講演を行った。内覧会には約50人が訪れ、講演はオンラインを含む約80人が聴講した。講演では、リュウキュウイノシシの食肉資源としての活用、離島医療における地域枠医学生の実情、先史時代の奄美・沖縄の生活など幅広い分野の報告があった。

 2015年4月に開設された同分室は、19年に現在の紬会館に移転。奄美群島の研究拠点としての機能を集約するため、今年7月に名瀬公民館金久分館にあったサテライト教室と実験室を移転し統合した。地域住民が気軽に訪問し情報交換ができる図書などを備えたセミナールームと、DNA抽出など簡易な実験設備を備えた多目的室も備えた。

 来賓としてあいさつした安田壮平奄美市長は「(24年初頭に同館に移転する)奄美群島広域事務組合との連携を深めたい」と期待を表した。

 大塚彰・学術研究院農水産獣医学系教授(58)は「奄美群島の魅力的な食肉資源」と題して講演。「リュウキュウイノシシにはうま味となる遊離アミノ酸の総和がブタの約2・5倍あり、熟成実験をしている」と紹介し、商品化への可能性を示した。

 同院法文学部の澤田成章准教授(38)は、研究拠点としている徳之島や沖永良部における台風時の食料不足に着目した島バナナの研究などを報告。児童と行った調査で「日本の流通量の約10倍の収穫の可能性がある」との結果を報告した。

 環境省から転勤した奥山正樹・環境学特任教授は奄美大島の世界自然遺産エリア内外で進めている「統合型モニタリングシステムの構築」について講演した。

 医学部長の大脇哲洋教授(59)は、医師不足が深刻な離島医療を担う目的で創設された地域枠医学生の実習状況を説明した。「県立大島病院を中心とした医療フィールドはうまくいっている」としたものの、実習の費用負担の問題などを提起した。

 先史人類学が専門の高宮広土教授(64)は、人類の移住で絶滅したドードー(インド洋モーリシャス島)やモア(ニュージーランド)を例に挙げ「1万7千年前からアマミノクロウサギを食べていた奄美で動物種の絶滅がないのは奇跡。〝島嶼文明〟という観点から研究したい」と語った。

 同研究センター長でもある高宮教授は「9年間、市民がふらっと立ち寄れる場所を目指してきた。鹿大にはさまざまな分野の教員がいる。植物の名前を知りたいだけでもいい。気軽に訪ねてほしい」と話した。