奄美大島ソテツ外来カイガラムシ被害

来島した日本ソテツ研究会のメンバーと龍郷町の竹田泰典町長らとの意見交換
安木屋場群生地でもCAS被害が拡大している

雌株掘り上げ保全を
研究会が提案
北部「壊滅的な状況」

一般社団法人日本ソテツ研究会(髙梨裕行会長)は、ソテツへの外来カイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)被害が拡大している奄美大島北部を中心にフィールドワークを行った。北部の被害について「壊滅的状況」との厳しい見通しを示し、保全に向けた取り組みでは種子の採取が可能となる雌株を守る取り組みを提案している。

今月15~18日まで滞在したのは、髙梨会長のほか、松方哲哉副会長、栗田雅裕事務局長。自生地、増殖などにより植栽された地域を含めて域外保全に向け種子(ソテツの実のナリ)や株を採取するとともに、島内の被害状況を視察した。

ハブの危険性を避けることができ、根が活発になる春までの間のこの冬(3月まで)の取り組みとして同会が提案するのが、①CASが付着した葉を切り落とした後、そのまま放置しては不健康(汚染の放置)な状態にあり、下草を含めて回収し焼却するか、ごみ袋に入れて出す②薬剤の散布は個別に、場所(地域)限定で集中的に行い、環境への影響を避ける③被害が及んでいる地域では雌株を掘り上げて別の場所に持っていき植栽する域内保全を。雌だけでなく雄にも付く子株も同様の取り組みーなど。

栗田事務局長は「奄美のソテツは、自生よりも人の手によって植えた人為的なものが多いイメージを抱いた。歴史的、文化的な価値がある。土留め用として植栽された箇所のソテツが枯死すると土砂崩れの危険性が出てくるが、観光資源・景勝地的な役割もあり、コンクリートなど人工的な工法で対策を施すのではなく、成長の早い直根性の植物を植え、その間にソテツを植栽するなど環境保全を重視していただきたい」と語った。

18日には龍郷町役場を訪問し、竹田泰典町長らと意見交換。竹田町長は「貴重な群生地として観光地にもなっている安木屋場(あんきゃば)のソテツを守りたい。保全に向けた本格的な事業の導入も検討している」と説明。担当職員らからは被害の状況としてドローンによる確認で山すそ部分だけでなく、上部のソテツにも被害が出ていることが報告された。