配合飼料1月から値上げ

子牛価格の低迷が続く中、年明けから配合飼料価格が引き上げられる。自給飼料の増産が求められそう(資料写真)

 

22年7~9月期以来 国の臨時支援事業延長
奄美の畜産農家 自給率向上で対策

 

 畜産農家向けの配合飼料価格が再び上昇する。飼料最大手のJA全農(全国農業協同組合連合会)が2024年1~3月期の供給価格改定(値上げ)を発表したもので、奄美でも子牛価格の低迷が続く中、痛手だが、セーフティーネットとして国が措置している「和子牛生産者臨時経営支援事業」は来年3月までの延長が決定している。奄美は副産物など粗飼料に活用できる資源があることから、自給飼料増産で打開策を目指す農家も出ている。

 JA全農の発表によると、飼料穀物のうち原料の約5割を占めるトウモロコシや、大豆粕(かす)といった主原料の国際相場は下落傾向で推移しているが、飼料価格を値上げするのは海上運賃の上昇が一因。トウモロコシは主産地の米国から主にパナマ運河を経由して日本に運ばれるが、同運河は干ばつに伴う水位低下の影響で運賃が上昇している。さらに円安もあって原料の輸入コストが上がっている。

 家畜の種類ごとに価格改定幅は異なるが、前期(10~12月)に比べて全畜種平均で1㌧あたり約2800円(3・2%)の値上げとなる。値上げは22年7~9月期以来、6四半期ぶり。

 大島地区内では5市場(喜界、奄美大島、徳之島中央、沖永良部、与論)で子牛競り市が開かれている。奇数月に年6回あるが、平均価格は今年に入り3月以降、下落が続き、年内最後だった11月の子牛市況の総平均は41万円台まで下がった。今年のスタートだった1月の総平均は57万円台で、16万円も下落したことになる。

 「頭数は出ており、競り値は底であってほしい。ただ周辺では飼養頭数が少ない農家で(畜産農業を)やめるという声も聞く。年齢を理由に高齢農家の離農はこれまでもあった。だが、今回は増やそうと計画していたのに断念の状況は、現在の畜産農業の経営環境の厳しさを表している」。奄美市笠利町の専業農家はこう語る。「子牛価格は下がり、資材費は上昇する。厳しいが、今が踏ん張りどころ。行政の支援に頼るだけでなく農家の努力も必要ではないか。自給飼料を作るため牧草の面積を増やしている。添加物を控え、栄養のある草の給与を心掛けている。さらに飼料収穫では単収を上げて自給率を高め、経費節減により対応していきたい」。配合飼料価格の値上げを前にしても意欲的だ。

 子牛価格が低落した場合の国のセーフティーネットは、恒常的な事業と臨時的な事業の二本立てとなっている。恒常的は肉用子牛生産者補給金制度、臨時的が和子牛生産者臨時経営支援事業だ。臨時事業はブロック別の平均価格が発動基準(60万円)を下回った場合、差額の4分の3を生産者に支援する制度。

 県大島支庁農政普及課の川越尚樹課長は「臨時的な事業は今年1月から措置され、12月までだったが、来年1~3月までの延長が決定した。配合飼料価格が再び上昇しても畜産農家への支援事業が継続される」と指摘すると同時に、「大島地区は飼料の自給が可能な資源がある。サトウキビの収穫残さを活用しての粗飼料づくりである『ハカマロール』も実証により明らかになった課題を改善し、生産を安定させたい。配合飼料など生産費が上昇しても経営への影響(農家負担アップ)を抑制できるよう、大島地区で可能な循環型農業の推進で飼料自給率向上を図っていきたい」と話す。