ソテツ加害の外来カイガラムシ発生

外来カイガラムシによるソテツ被害は奄美大島全市町村で確認されていることが報告された(被害が深刻化している北部地域)

奄美大島全市町村で確認
県まとめ 初確認時比、4・4倍に拡大

ソテツを加害する外来カイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)の奄美大島での被害発生状況について県がまとめ、ホームページで公開している。2023年11月末現在で北部地域だけでなく南部でも発生しており、5市町村全てで被害の発生を確認。22年11月の初確認時と比較すると4・4倍に拡大している。

県森づくり推進課によると、被害を示す本数は市町村などの報告によるもので、視認による推定本数。

国内で初確認となった時点では570本の被害発生本数だったが、1年後の昨年11月末には2503本に。このうち北部の奄美市が1586本、龍郷町が709本となり、2市町計で全体の91・69%と9割を占める。初確認時との比較では奄美市が約3倍、龍郷町は約21倍に急増している。

初確認時は被害発生がなかった南部地域の大和村、宇検村、瀬戸内町でも発生。昨年の2月末、5月末、8月末の報告では2、3本だった大和村は11月末には186本に。宇検村と瀬戸内町は11月末でも11本と少数だが、8月末まで報告数ゼロだった瀬戸内町は11月末になり被害が確認された。

このまとめについて昨年12月、北部を中心に奄美大島でフィールドワークを行った一般社団法人日本ソテツ研究会の髙梨裕行会長は「もともと北部は海岸沿いなどソテツの群生地が多く、山の斜面が丸ごと枯れている箇所もあった。これまで被害が報告されていなかった瀬戸内町でも発生が確認されているのなら、まだ少数のうちにしっかりと対策を進め拡大を防いでいただきたい」と求めると同時に、8月ぐらいまで枯れ込みがマイルドだったのに、8~12月の4か月間に一気に被害が拡大した点に注目。髙梨会長は「この時期の平均的な気温は20~28度程度。CASは28度以下で繁殖が活発になるという文献があり、ソテツが葉を出すライフサイクルと一致する。半年のサイクルという期間を防除に生かしてほしい」と指摘。公有地だけでなく私有地についても行政が発行しているパンフレットを参考に、被害の状況を観察しながら適切な対策の必要性を挙げている。

県や市町村は適切な防除の啓発とともに、CASが付着したソテツを「大島地区から他の地区へ持ち出さない」「大島地区から持ち込まない」よう求めており、発見した場合は県や市町村への通報を呼び掛けている。