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着色が進んでいるタンカン。間もなく収穫期に入り、来月から島外出荷が開始される

タンカン共販量低迷
JA大島事業本部の本気度を

「部会員のうちJAに出しているのは5分の1程度。ほとんどの部会員が出していない。経済担当の理事は、あらゆるところに顔を出すべきでは。出すのを待っていては、共販量の上積みはできない」

特産果樹・タンカンの集出荷開始を前にJAあまみ大島事業本部の果樹専門部会が20日まで開いた出荷販売対策会議。19日に奄美市であった会議での出席者からの発言だ。昨年末段階だが、部会員からの共販(JAで取り扱い販売)出荷申込量が前年度実績を19㌧下回る78㌧との報告に対して飛び出した。

かんきつ類特有の「隔年結果」がある関係で表年と裏年があり、今期は生産量が少なめの裏年。毎年繰り返されているこの現象は、大島事業本部の共販実績にも表れている。最近の状況をみると、2020年度産実績は101㌧と100㌧超だったが、翌年の21年度になると66㌧まで落ち込んでいる。22年度は97㌧まで回復、ところが23年度計画では再び下降を見込む。上下の波の激しさは表年・裏年の結果だろうか。

だが、JA共販ではないものの、品質保証が可能な光センサー設置の奄美大島選果場を利用する委託(選果選別のみ利用)の方は、前年度実績(156㌧)を上回る169㌧の申し込みがある。前年度まで利用してなかった量を持つ大規模農家で、今年度から申し込んでいるところも出ている。

JAの部会員なのにJAに出さない。共販量の低迷は販売計画に影響を与える。共販による今年度の出荷先は、その他を含めて18あり、取引先で量が多いのは「ふるさと便」、食品通販業者、経済連(市場)など。タンカンは食味の良さなどから消費者に好まれており人気のかんきつだ。JAによると、こうした取引先は「もっと量が欲しい」と希望しているという。ところが共販量の関係で応じることができない。「金を生み出す(収益を上げる)木はたくさんある。なのに量を集めることができない」(JA関係者)というはがゆさ。

方法はある。量を集める取り組みである集荷の強化だ。JAでは持ち込み指定場所まで遠距離にある地域の改善方法として集荷場の増設を検討している。さらに部会員の姿勢に変化を与えるような本気度を大島事業本部が見せることはできないだろうか。奄美市の会議での出席者の発言に応えるためにも、「JAに出してもらう」取り組みを担当課・担当職員だけに任せるのではなく、理事などの役員、さらに他部署の職員含めて大島事業本部一丸となって示せないか。集出荷の時期に合わせた人員の増員によって。現場の報告を受けるだけでは前進しない。役職員自ら現場に足を運び、農家の声に触れ、自らも取り組むことで集荷体制の改善を図りながら協力を求める。それにより共販の上積みが図れるのではないか。

若手を中心とした農家の中には自分の果樹園での生産だけでなく、産地全体の果樹農業発展に向けて踏み出そうとする動きもある。こうした農家の志の高さは産地の将来を感じさせる。大島事業本部も足並みをそろえて託せる組織に生まれ変わってもらいたい。量が増え、選果場の稼働率がアップすることによって、金を生み出す木により赤字運営から脱皮できる。
 (徳島一蔵)