黒砂糖に「がんリスク低減効果」?

昔ながらの「砂糖小屋」製法で受け継がれる「純黒糖」製造(昨年12月、資料写真)


徳之島町健康づくり講演会=18日、同町生涯学習センター

約14年奄美の5千人追跡 アジア太平洋学術誌で発表
日本の多機関共同研究

 【徳之島】「黒砂糖(黒糖)を最も多く摂取する人は全てのがんリスクが約40%以下に」――。黒砂糖は奄美群島の「長寿食材」の一つだが、アジア太平洋地域に関する学術誌に、同摂取と死亡リスクに関する日本多機関共同研究の成果が登場。今月18日の徳之島町健康づくり講演会では、群島の健康課題や食の強みを19年間研究した同研究者も報告。国文化審議会の「薩南諸島の黒糖製造技術」登録無形民俗文化財指定(答申)とも相まって黒砂糖への関心が高まりそうだ。

 アジア太平洋地域に関する論文を掲載する学術誌「アジアパシフィックジャーナル」の昨年12月号。鹿児島大学医学部関係や国立研究開発法人健康・環境リスク部門環境疫学室などの共同コホート研究(要因対照研究)、「黒砂糖の摂取量と減少との関連性―日本の奄美群島地域におけるがんのリスク」が原著。奄美群島の一般住民5004人(男性2057人・女性2947人)を対象に13、14年(中央値)にわたって追跡調査した。

 これら一部データも基に徳之島町健康づくり講演会(同町生涯学習センター、約130人聴講)で講師を務めたのは、同共同研究にも携わった鹿児島大学病院地域医療センター長の嶽﨑俊郎特任教授(同大大学院医歯学総合研究科・国際離島医療学分野元教授)。「19年間の研究から見えてきた奄美の健康課題と強み」と題して、離島住民の健康全般を解説した。

 「黒糖摂取と部位別がん危険度」調査については、黒糖摂取が「少ない」・「中程度」・「多い」(1日1回以上)の三択で追跡調査していた。結果「多い人」は「少ない人」に比べて危険度が▽全がんで約40%減▽胃がん約70%減▽大腸がん30%減▽肺がん約60%減▽乳がん約50%減▽前立腺がん約10%減だった。原因は未解明だが、顕著なデータが得られた。

 さらには黒砂糖(純黒糖)は精製糖(白糖)と同類の「糖類」でありながら、適量であれば「血糖値の上昇を抑制する効果が期待できる」とも紹介。カリウムやカルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどミネラル含有量が高く、ポリフェノールやポリコサノールでもおなじみだが、グルコースの腸吸収やインスリンとの関係など「糖尿病」への効果についても関心を集めそうだ。

 昔ながらに手作業で収穫されたサトウキビを原料に伝統の「砂糖小屋」製法による「純黒糖」製造にこだわり続けて53年の徳南製糖(伊仙町犬田布)。がん抑制効果をも期待させる今回の学術論文に南郷秀一代表(73)は「国文化財指定化(答申)に加えて科学的データで黒砂糖の新たな価値観・評価が高まることは非常に喜ばしいことだ」と自信を深めている。