タイの若者と島の中高生交流

クラゴーで水おけを頭に乗せて昔ながら水くみを体験するタイの若者と地元の中高生ら(27日、和泊町喜美留字)

 

 

アイデンティティー守る意識を
島内巡り沖永良部の文化知る

 

 

 【沖永良部】タイの若者と島内を巡るイベント「島の文化を知るヘリテージキャンプ」が27日、沖永良部島内であった。タイの若者2人と国内外の言語研究者4人が来島。地元の中高生ら13人と交流しながら、島の歴史・文化を伝える場所を見て回った。 

 イベントは、島独自のアイデンティティーや文化を認識してもらいたいと、和泊町の子育て支援団体「あしまなの木」が企画。27日から2日間の日程で行われる。日本学術振興会の科学研究費助成事業「タイ少数民族における持続可能なコミュニティー協働型言語・文化ナレッジベースの構築」を活用した。

 今回、タイの少数民族出身の若者2人とマヒドン大学のスミットラ准教授、東京外国語大学のボルロンガン准教授と冨岡裕特別研究員、国立国語研究所の横山晶子特別研究員が来島した。

 初日、和泊町の子育て支援施設スマッピーで行われた事前学習では、同町歴史民俗資料館の先田光演さんと伊地知裕仁さんが島の地形の特徴や島民の生活などを紹介。島の水くみ場だったクラゴー(暗川)の様子を写真で説明すると、参加者から「女性だけが水をくむ作業をするのはなぜ?」などの質問が出た。

 事前学習後、喜美留字(あざ)のクラゴーを見学。参加者らは、水おけに4㌔の重りを入れて頭に乗せたり、その状態で階段を上ったりして、昔の島民の生活を体験した。

 このほか、石灰岩が溶けてできた地形「ドリーネ」や笠石海浜公園のトゥール墓、島民が信仰する「神石」が置かれている場所などを巡った。

 2日目は、知名町の芭蕉(ばしょう)布工房や昇竜洞、昔ながらの方法で黒糖を製造する和泊町のまごころ製糖を見学するほか、漂着ごみについて考えるためのビーチクリーン体験を予定している。

 タイの少数民族タイバーン族のカンジャウィーさん(27)は「島の人が温かく出迎えてくれたことに感激した。今回のイベントのように幅広い年代や行政も関わる企画を私たちのコミュニティーでも考えていきたい」。黒タイ族のベンジャポンさん(26)は「黒タイ族には黒タイ語という独自の言葉があるが、話せる人はいても文字を書ける人はいない。現在、日常的に黒タイ語を耳にする機会を増やす活動をしている」と述べ、島の子どもたちに向けて「今回のプロジェクトを通して、自分たちの文化を守る意識を強くしてほしい」と話した。